スマートベータ投資に特化した運用会社、ウィズダムツリーのETFを考察する。

日々拡大を続けるETF業界。これまでの主流であった時価総額加重型ETFとは別に、現在ではスマートベータ指数連動のETFが急ピッチで開発されています。

私自身も保有しているVYMやHDVは高配当にフォーカスしたETFです。その他、バリュー株やグロース株、収益等のファンダメンタルズ重視型など、各社新たなスマートベータ指数の開発と共に、これまでにないETFを世に送り出して来ました。

ウィズダムツリーは日本ではブラックロックやバンガード程有名ではありませんが、様々なスマートベータ指数を独自に開発し、ETFを運用しているユニークな会社です。

ETF運用会社は上位3社が圧倒的シェアを誇る

ETF業界はブラックロック・バンガード・ステートストリートの3社が圧倒的シェアを誇っています。この3社に比べたら他の運用会社の割合なんて微々たるもの。おそらく、日本人の多くが保有しているETFも前述3社のものでしょう。

ETF運用資産額の割合【2017年10月5日時点】

ご覧のように、ブラックロックが39.71%、バンガードが24.87%、ステートストリートが17.65%とこの3社だけでETF全体の82.23%のシェアを占めています。

Invesco PowerShares(パワーシェアーズ)は2002年に設立されたシカゴに本社を置く運用会社です。パワーシェアーズと言えばナスダック100連動ETFの「QQQ」が有名です。

その他運用会社のETFについてはあまり日本の証券会社では扱っていないようです。もし、購入したいと思うのならば海外証券口座を開設する必要があり、若干投資のハードルは高くなります。他の運用会社が特段投資意欲をそそるようなETFを運用しているわけではありませんから、我々はブラックロックやバンガードのETFを購入すれば良いでしょう。

いくら日本の証券会社で海外ETFがお手軽に購入できるになったとは言え、対象となるのはある程度の資産規模のあるETFだけです。各社様々なETFを運用しているとは言っても、我々日本人が購入できるETFは必然的に限られてくるのです。

長期保有目的のETFと言えど、出来高は重要です。同じような指数に連動するなら出来高の多いETFに投資家は流れます。また、普通に考えればETFへの資金流入が多ければ多い程、経費率を抑えた運用が可能になります。

つまり、ETFの純資産額増加と低コストの実現は共に成り立つものであり、新規参入の運用会社が超低コストのETFを世に送り出すのは、現実的には難しいのです。よって、ETF業界は今後も3強が続き、この構図はそう簡単には変わらないでしょう。

特にバンガードに至っては、自社の株式をETFに組み込むという、他にはない仕組みを実現しているため、より運用資産の増加と低コストの実現が可能となるのです。現に数年前までは、ブラックロックに次ぐ第2位はステートストリートでした。しかし、圧倒的な低コスト運用を続けたバンガードは急速に運用資産を増やしています。

指数提供会社とETF

ETFは基本的はインデックス運用です。インデックス運用とはベンチマーク(目標)となる指数を定め、それに連動するようにETFを運用すること言います。

実はこの指数提供会社も上位数社が圧倒的シェア率を誇っています。有名なのは、S&P・ダウ・ジョーンズやMSCI(モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナル)やFTSE Russell(フッツィーラッセル)などです。

ETF運用会社は指数提供会社に指数の使用料を支払っており、そのため近年では各社時価総額加重型に変わるスマートベータ指数の開発を進めています。

2013年ごろにバンガードがベンチマークの変更を行いました(MSCI→FTSE、MSCI→CRSP)。バンガードは低コストで有名な運用会社です。使用料の高い指数から、使用料の安い指数に切り替える事でさならる低コスト化を狙ったというわけです。

ちなみに、バンガード社の指数変更の発表を受け、MSCIの株価は収益悪化の懸念から大きく下落しました。

MSCI日足チャート

しかし、その後はETF業界の拡大と共に、MSCIの株価も大きく上昇してきました。

MSCI月足チャート

いくらバンガードが指数を変更したと言えど、MSCIをベンチマークとしたETFはたくさんあるので、結果的には絶好の買い場だったようです。現在の株価は暴落時の4倍以上の成長を遂げています。

ウィズダムツリーとは?

ウィズダムツリーは全世界で第7位の規模を誇る運用会社です(アメリカでは5位)。ウィズダムツリーが初のETFを設定したのは2006年ですから、ブラックロックやバンガードに比べるとその歴史は浅い事になります。

ウィズダムツリーの特徴は、ベンチマークとなる指数を独自に開発し、それを元にETFを組成する点にあります。そして、ウィズダムツリーのETFは「配当」を重視しており、様々なウエイト付けの方法による配当戦略を可能としているのです。

ETF運用会社は指数提供会社に指数の使用料を払いますから、それを考慮すれば独自に指数を開発することは経費率の削減に繋がると見る事が出来ます。しかし、新たな指数の開発には膨大な情報の分析やリサーチ等が掛かるという事を考えると、それはそれで負担になるのかもしれません。

現在、圧倒的純資産額を誇るのはS&P500をベンチマークとしたETFです。S&P500は時価総額加重型であり、この仕組みでは時価総額の大きい銘柄ほどより多くの割合を保有することになります。

しかし、時価総額の大きい銘柄=比較的割高の可能性も高い、という観点に立つと、この時価総額加重型というのは必ずしも効率的とは言えません。

これが、時価総額加重型とは別の基準、配当や企業のファンダメンタルズを重視したスマートベータ指数が注目され始めた理由です。

ウィズダムツリーは、配当とその再投資こそが株式投資のリターンの源という理念を持っています。故に必然的に配当にフォーカスしたETFが多くを占めるのです。

かの有名なジェレミー・シーゲルの著書「株式投資の未来」には次のようなデータがあります。

・1925年12月にS&P500に1万ドルを投資したとすると、2015年には148万ドルになっている。

・上記のデータは株価変動のみ。これに配当とその再投資を加味すると、2015年には4,758万ドルになる。

おそらく、株価変動のみで見たら高配当系のETFはS&P500には勝てないでしょう。しかし、長期間に渡り配当を再投資することが出来れば、結果はまた違ったものになると考えています。もちろん、好景気か不景気かでも結果は変わってきますが、配当が未来のリターンに与える影響はとてつもなく大きいという事です。

2015年にウィズダムツリージャパンが設立されたことから、日本の各証券会社でもウィズダムツリーのETFの購入が可能となっております。

そこで、ウィズダムツリーの中でも比較的メジャーなETFをご紹介していきたいと思います。

DHS【ウィズダムツリー 米国株 高配当ファンド 】

DHSはWisdomTree ハイ・ディビデンド・インデックスをベンチマークとしています。同指数は最低200万ドルの時価総額を有すると同時に、3ヵ月間の1日平均の出来高が最低200,000ドル以上の銘柄を基準に配当利回りによりウエイト付けを行っています。そして、配当利回りの上位30%の銘柄が構成銘柄として選定されています。

まとめると、一定規模以上の時価総額を誇り、日々の流動性も加味することでスクリーニングし、最終的には配当利回りにより絞り込むと言ったところでしょうか。

DHS基本情報【平成29年10月8日時点】

設定日 2006年06月16日
純資産 1430億円
平均出来高 40,821
分配利回り 3.13%
経費率 0.38%
銘柄数 417

分配利回り銘柄数は申し分ないのですが、経費率が高いですね。0.38%と言う数字は絶対的に見れば高いとは言えませんが、バンガードやブラックロックの高配当系ETFの経費率が0.08%ということを考えると、どうしても高く見えてしまいます。

それに伴い純資産と出来高もいくらか少ないようです。今後の動向次第では購入を検討しても良いかもしれませんね。

S&P500との比較(ローソク足がS&P500、ラインチャートがDHS)

S&P500を大幅にアンダーパフォームしています。しかし、この結果は配当が加味されていませんからある意味妥当ということになります。

配当再投資戦略の場合、ハイペースな成長は再投資の妨げになる事から、緩やかな上昇の方が望ましいと言われています。ここで勘違いしている人が多いのは、「緩やかながら」も成長を続ける必要があるという事です。優良(と言われている)企業の株価が下落している時は確かに買いです。しかし、その企業の株価が波打ちながらも下落し続ける状態では、将来のリターンは明らかに低くなります。株式投資の未来で、スタンダードオイルがIBMをアウトパフォームしたのも、投資家達に高い期待をされていた訳ではないけれども、それなりの成長を続けていたことにあります。

つまり、歴史のある優良?企業だからと言っても、ダラダラ下がり続けるような銘柄は将来のリターンを押し下げる要因になるという事。ハイテクセクター程でないにしろ、ある程度の成長は必要であるということを頭に入れておいてください。

成長の罠に嵌まりたくがないために、成長の罠の罠に嵌まってしまっては元も子もありませんので。

構成銘柄上位5

AT&T 4.21%
エクソンモービル 4.18%
ジョンソン&ジョンソン 3.78%
ベライゾン 3.27%
ファイザー 3.03%

上位5銘柄は他の高配当系ETFと何ら変わりないご様子。言い方を変えれば、ある程度の時価総額と流動性を伴った高配当銘柄というと、スクリーニングされる銘柄が似通ってくるのは仕方ないのかもしれません。

もちろん、どの銘柄も個別で保有したくなるような優良企業に間違いはありません。

DLN【ウィズダムツリー 米国大型株配当ファンド 】

DLNはウィズダムツリー 米国大型株配当インデックスをベンチマークとしており、同指数は時価総額の大きい大型株を配当利回りによりウエイト付けしています。

先程のDHSよりも大型株にフォーカスしているという事ですね。

DLN基本情報【平成29年10月8日時点】

設定日 2006年06月16日
純資産 2170億円
平均出来高 34,634
分配利回り 2.46%
経費率 0.28%
銘柄数 295

経費率のわりに分配利回りが低い。純資産総額、流動性も他のETFと比べるとちょっと…。

S&P500との比較(ローソク足がS&P500、ラインチャートがDLN)

若干劣ってはいますが、値動き自体はS&P500と似ています。

結局、決め手は分配利回りですね。なんせ配当系のETFなのですから。

構成銘柄上位5

アップル 3.99%
マイクロソフト 3.58%
AT&T 2.77%
エクソンモービル 2.75%
ジョンソン&ジョンソン 2.49%

ETF名称が配当ファンドであって、高配当ファンドでない事から、構成銘柄上位でも配当利回りの低い企業が目につきますね。アップルの配当利回りは1.6%程度、マイクロソフトは2.2%程度です。

S&P500ETFよりは利回りが良いけど、高配当系のETFには劣る。何とも判断しづらい立ち位置です。

DEW【ウィズダムツリー 世界株 高配当ファンド】

DEWはウィズダムツリー グローバル・ハイ・ディビデンド・インデックスをベンチマークとしています。同指数は世界の配当利回りの高い銘柄によって構成されています。また、時価総額が20億ドル以上の企業が配当利回りにより順位付けされ、その上位30%が構成銘柄として選定されています。

DEW基本情報【平成29年10月8日時点】

設定日 2006年06月16日
純資産 85億円
平均出来高 8,126
分配利回り 3.21%
経費率 0.58%
銘柄数 626

分配利回りは良いのですが、はやり経費率がネックです。純資産・出来高共に少ないです。今後どれだけ資金流入があるかによりますが、やはりバンガード等が低コストの商品を出している中、0.58という数字はどうしても高く見えてしまうのかもしれません。

S&P500との比較(ローソク足がS&P500、ラインチャートがDEW)

S&P500に大きくアンダーパフォームしています。高配当系ETFとは言えど、横ばいの動きが続くようでは投資には迷いが生じますね。短期的に見ればリスクが高くても、長期的に見れば上昇が見込めるというのが株式のメリットなので。

構成銘柄上位5

エクソンモービル 2.67%
AT&T 2.63%
シェブロン 2.14%
ベライゾン 2.08%
ファイザー 1.79%

全世界分散投資と構成割合のトップに位置するのはアメリカ企業ばかりです。どの企業も長期で保有したくなるような優良銘柄ばかり。その点は安心できます。

DEM【ウィズダムツリー 新興国株 高配当ファンド

DEMはWisdomTree エマージング・マーケッツ・ハイ・ディビデンド・インデックスをベンチマークとしています。同指数はWisdomTree エマージング・マーケッツ・ディビデンド・インデックスの中から配当利回り上位30%が選定され、前年に支払われた現金配当によりウエイト付けされています。

DEM基本情報【平成29年10月8日時点】

設定日 2007年07月13日
純資産 1730億円
平均出来高 238,980
分配利回り 3.82%
経費率 0.63%
銘柄数 317

分配利回りは3.82%とかなり高いです。しかし、それに伴い経費率も高め。純資産と出来高も少なめです。

S&P500との比較(ローソク足がS&P500、ラインチャートがDEM)

チャート的には大底は脱したようにも見えますが、S&P500のように右肩上がりの成長とは言えないようです。

もっとも、新興国と言う特性上、多少のボラティリティは仕方ありませんが、こういう銘柄こそ仕込み時がものを言うので、初心者には向いていないかもしれません。

構成銘柄上位5

ガスプロム 3.72%
Hon Hai Precision Industry Co(鴻海精密工業) 3.52%
ルクオイル 3.30%
China Construction Bank Corp(中国建設銀行) 3.08%
CNOOC Ltd(中国海洋石油総公司) 2.42%

 

ガスプロム

ロシアの半国営企業です。天然ガスの生産・供給における世界最大級の企業です。

Hon Hai Precision Industry Co(鴻海精密工業

2016年にシャープを買収した企業です。スマートフォンや薄型テレビの部品などを製造しています。

ルクオイル

ロシアの企業で、石油やガスに関連する事業を行っています。

China Construction Bank Corp(中国建設銀行)

中国銀行、中国工商銀行、中国農業銀行と並ぶ、中国商業銀行の1つです。

CNOOC Ltd(中国海洋石油総公司)

中国の石油・天然ガス企業です。

上位構成銘柄のみ何となく名前を知っているレベルです。ETF、特に新興国を対象とした商品の場合はそこまで気にする必要はありませんが、構成比率上位銘柄だけは知っておくと良いでしょう。

まとめ

ウィズダムツリーにも長期投資に相応しい優良ETFは確かにあります。時価総額加重型ではなく、独自にスマートベータ指数を開発し、これまでにないETFを世に送り込む運用会社としては非常に興味深いものがあります。

しかし、経費率と出来高の問題がどうしてもネックになります。ウィズダムツリーETFの経費率が特段高いというわけではありませんが、バンガードやブラックロックと比べてしまうと、どうしても高く感じてしまうのです。

前述したように、ETF業界は上位3社が圧倒的なシェアを誇る世界です。そもそも現時点である程度の勝負はついているのです。

この構図を変えるには、何かウィズダムツリーにしかない強みと言うのを探し出す必要があります。独自にスマートベータ指数を開発してると言っても、バンガードのVYMやブラックロックのHDV上回るパフォーマンスを叩き出しているわけではありません。

今後もウィズダムツリーについてはウォッチを続けていきます。理念や商品自体は非常に素晴らしいものが多いので今後の躍進に期待しています。

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