バリュー投資の本質を探る:1ドルのものを40セントで買う哲学とは?

割安な株を割安なうちに仕込み、本来の水準まで株価が上昇するのをひたすら待つという投資戦略をバリュー投資と言います。多くの書籍やネット上の情報では、このバリュー投資に際し、PERやPBR等を用いて銘柄選定するのが王道であるかのような説明をしています。

これは必ずしも間違いとういうわけではありませんが、バリュー投資の本質はもっと別の所にあります。

「1ドルのものを40セントで買う哲学を学んだ」

この言葉の意味を知ることがバリュー投資を理解する上では重要となってくるのです。

割安株の見つけ方

低PBRや低PER銘柄は確かにある意味では割安と言えます。しかし、これらを基準として銘柄選定を行って利益を上げる事が出来る確率はどのくらいなのでしょうか。

そもそも低PBRや低PER銘柄なんてものは、ネット証券やヤフーファイナンス等のスクリーニング機能で簡単に見つける事が出来ます。こんな簡単な労力で投資が上手くいくはずもありません。

本当に「割安な株」その真の価値に投資家達が気づいていない企業と言うのは確かに存在するでしょう。ですが、他の多くの投資家が気づけていない以上、自身もその存在には気が付くことが出来ないと考えるべきです。

結局のところ割安株はいつまで経っても割安なまま放置され、成長の見込める企業の株価というのは既に上昇に転じているというのが私の中での答えです。

先見の明がある人ならば話は別ですが、私にはそれがありません。よって将来大化けする株を見つける事も出来ません。

では、バリュー投資成功のカギはいったい何なのでしょうか。世界三大投資家の一人である、バフェットの考え方から読み解いていきます。

1ドルのものを40セントで買う哲学とは?

1ドルのものを40セントで買う哲学を学んだ。

世界有数の投資家、ウォーレン・バフェットの言葉です。

バリュー投資の本質はこの言葉に集約されている。私はそのように感じています。

ではいったい1ドルのものを40セントで買うにはどうしたら良いのか。先ほども話したように1ドルのものは大方1ドル付近で取引されるのが相場です。

例えば、ある商品を少しでも安く購入しようとオークションに参戦したとします。スタートは安くても、参加者たちの競り合いにより結局はある程度の金額に落ち着きます。その傾向は需要のある商品になるほど顕著に表れ、多くの人に注目されていることを考えれば、ある意味仕方のない事なのです。

しかし、そんな中にあっても定価よりも大幅に安く落札できる商品があります。それは、皆に注目されてない商品、不人気商品などです。こういった商品は競り合う相手がいないからこそ安く落札できるのであって、それが欲しい人から見れば「割安」に映るのかもしれませんが、その他大勢の人から見れば購入するに値しない商品という事になります。

上記の考えは割安株の考えにそっくり当てはめる事が出来ます。結局のところ、本当の意味での優良株を割安のうちに仕込めるのは一部の人達(様々な情報に精通している人)であって、我々個人投資家にアドバンテージがあるとは言いづらい状況なのです。

では我々個人投資家が優良企業の株を割安な価格で購入するにはどうしたら良いのでしょうか。先ほども言ったように優良企業の株は既に多くの投資家達に目を付けられています。

もちろんそこからポジションを仕込んでいって、将来の値上がりに期待するという方法も間違いではありません。しかし、それでは資金に限りのある人はそれなりの株数しか買えません。

ではいったい、どのような時がバリュー投資の観点から見て絶好の買い場に当たるのか。バフェットの投資術に習い、解説していきます。

相場全体が暴落した時

株式市場では数年に1回程度は、”そこそこの暴落”が起こります。相場全体が下がる時=日経平均株価やTOPIXが下がる時と言うのはほとんどの銘柄が大幅に下落します。日経平均に採用されてない銘柄、TOPIXに採用されてない銘柄までもが、相場全体の下げに引っ張られて暴落します。

暴落は言うなれば、投資家達の”恐怖”の現れです。具体的な売り理由が見つからなくても、不安な心理が売りが売りを呼ぶ=暴落を起こすのです。

バフェットはこのような暴落の時を最大の買い場としていました。ブラックマンデーの時のように、多くの投資家が平常心を忘れ、売りに走る時でさえ、バフェットは冷静に買い増しをしていたのです。

相場全体が暴落する時は、「1ドルのものを40セント」で買うことの出来る絶好のチャンスのです。安値で大量の買い増しをすることが出来る暴落と言うのは、バフェットにとって恐怖ではなかったのです。

ここでNYダウの月足チャートと世界的大暴落発生前後の推移を確認してみます。

NYダウに投資している場合、結果論的な意味合いで見るならば、暴落による買い増しは間違いではありません。

しかし、上記の3つの出来事について暴落以前の水準まで戻る期間を確認してみると

ブラックマンデー:2年

ITバブル崩壊:6年

リーマンショック:5年

ザックリな数字になりますが、NYダウでもこれだけの暴落には回復までにそれなりの期間が掛かっているのです。

次に日経平均株価月足チャートを見てみます。

日経平均株価とNYダウでは見え方がだいぶ違ってきます。まず、ブラックマンデー発生時の日本はバブル景気の真っ只中。ブラックマンデーの暴落からも早い段階で切り返し、過去最高値である3万8915円を目指していきました。ちなみにブラックマンデー時の下落幅は3,836円で、この記録は今も破られていません。

バブルが崩壊すると、日経平均株価は急落。その後上昇・下降のサイクルを繰り返し、2000年のITバブル崩壊は日本にも影響を及ぼしました。

その後、いざなみ景気を向かえ、株価上昇に勢いが付くものの、サブプライムローン問題の拡大とリーマンショックにより、大暴落。日経平均株価はその後長い停滞期へと突入しました。2011年には東日本大震災の発生などを経て、その後はアベノミクスにより日経平均株価は2万円台への階段を登り始める事になるのです。

日経平均株価とNYダウの決定的な違い

NYダウは長期間で見れば右肩上がり、すなわち暴落で買い増しするというスタンスでも超長期保有前提ならば収支はプラスとなります。「落ちるナイフとは掴むな」という格言通り、下落途中の株を買う事は怖くてできません。だからって底打ちの確信をすることは容易ではありません。

でも超長期的な視点で見ればNYダウは必ず暴落前の水準まで回復してきています。アメリカは経済の中心であり、ファンダメンタルズが強い事など様々な理由はありますが、長期投資を目指す投資家にとっては魅力的な市場なのかもしれません。

対して日経平均株価は外部要因をもろに受けます。バブル景気真っ只中で3万8915円を付けた後は、上下・停滞の繰り返し。買いと売りのタイミングをしっかりと見極めなければ長期投資でキャピタルゲインを得る事は難しいでしょう。

2016年度の暴落を振り返って見る

2016年度の日経平均株価暴落と言えば、イギリスのEU離脱問題とトランプ大統領による暴落です。

日経平均株価日足チャート

Brexitの際は下落幅で1286円、トランプショックの際は下落幅で919円となっています。

どちらもリーマンショックの再来などと騒がれましたが、結局はすぐさま切り返し、上昇へと転じています。どちらも投資家達の予想を裏切る結果となった事が理由として挙げられます。まさに不安と恐怖が売りを呼んだと言えそうです。

また、両暴落の共通点として、メディアが投資家達の不安心理をより悪化させるような報道をしたことなども挙げられます。

1ドルのものを40セントで買うには勇気が必要

上記の例はあくまで日経平均株価を基準として考えてはいますが、Brexitとトランプショックを例に出し、「買いまくれば大儲けだ」なんて言えません。結果的には利益を得る事が出来たと言えるだけです。

確かに、今回の例では実体レベルでの理由付けと言うよりも、大方の予想を裏切ったという心理的な側面からの暴落と言えるかもしれませんが、それも今だから言える事なのです。

いずれにせよ、1ドルのものが40セントになったとしても、次の日は30セントになるかもしれない。20セントになるかもしれない。長い目で見れば1ドルまで回復するかもしれないけれど、それがいつになるか分からない。

こんな状況で多数の投資家達の行動に反し、買いに走る事は出来るのでしょうか。

私には出来ません。

バフェットは株を買う時にその企業の事を徹底的に調べ上げます。揺らぐことのない経営基盤と優れた経営者。そんな企業の株ならば世界的な暴落からでも回復するであろうとの確固たる確信を持っているからこそ、「1ドルのものが40セント」になった時に買う事が出来るのです。

株価が特殊な事情により株価が下がった場合

相場全体の暴落以外に、1ドルのものを40セントで買う方法は「ある企業の株価が特殊な事情により下がった場合」です。

大規模なプロジェクトが失敗したり、商品に不具合が見つかる。そんな時企業の株価は大きく下がります。しかし、根本的に優秀な企業ならば、必ずやそれを乗り越え、株価も必ず回復するであろうという考え方です。

もちろん、その問題を乗り越えるだけの体力が、その企業にあるのかという点を見極める必要はありますが、普段から投資先の経営者たち密な関わりを持っていたバフェットだからこそ出来た投資術なのかもしれません。

まとめ

バフェット流のバリュー投資ってもの凄く難しいです。バフェットは「投資は忍耐」だと言ってますが、バリュー投資には正しくその考えが当てはまります。

PERやPBRを見て割安な株を仕込む。これに主を置くことは、バリュー投資の本質からかけ離れています。

また、今回の記事を読むことにより、1ドルのものを40セントで買う方法と言うのは解って頂けたと思います。

1.相場全体が暴落した時

2.株価が特殊な事情により株価が下がった場合

いずれのケースにより、本来の価値よりも割安な価格で買う事は出来ます。しかし、その後いつになったら株価が回復するのかなど誰にも分かりませんし、そこからさらに下落する場合だってあります。長期的に見ればNYダウは右肩上がりと言う結果論も戦略としては大切ですが、その場に立たされた時の心理状態や将来への不安などを考えると、必ずしも実行できるとは限りません。

損切りはしない。下がってもいつかは元の水準まで戻ってくる。だから長期投資はいつか勝つことが出来る。

この考えはNYダウで言えば正解ですが、日経平均から見たら合理的とは言えません。

加えて、日本市場とNY市場は根本的に違うという事。日本にも素晴らしい企業はたくさんありますが、その株価の多くは為替や海外市場などの影響を存分に受けてしまう事。日経平均採用銘柄に関しては、先物主導の値動きにより、どうしても短期筋(海外投資家)などの影響を強く受けてしまう事を考慮しなくてはなりません。

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