長期投資における買い増しのタイミングを計るのに200日移動平均線は有効か?

市場は効率的と考えるのなら、ある材料が発生した時点で株価はそれを瞬時に織り込む。ゆえにその後の変動は再び新たな材料の発生により左右される事になるから、将来の株価を予測することは出来ない。

短期売買をしているとテクニカル指標の脆さが分かってきます。あらゆる方法を使っても株価を予測することが出来ないのだから、一般人が長期投資をしようと思ったら、定期的な買い増し、結果的にはドルコスト平均方が望ましいと言われる背景にも納得がいきます。

では、テクニカル指標は100%役に立たないのかと言うと、それもまた考え方次第です。

当ブログでは、テクニカル指標を肯定したり、否定したりと一見矛盾した立場を取っていますが、どちらの考え方にも一理ありますので、良いと感じたら是非取り入れて見てください。

200日移動平均線と株価

移動平均線と言えば、スイングトレードにおける私の最大の武器ですが、実は長期投資でもそれなりに役目を果たしてくれるかもしれません。

移動平均線はある期間内における株価の終値を日数で割ったものです。200日移動平均線は、200日のそれぞれ日ごとの終値を足し、200で割ったものです。

スイングトレードなどの短期売買の際は75日や100日、25日などを使いますが、長期投資等の長いスパンでモノを見る場合は200日のように長い時間軸が適していると思われます。

ただ、ここで注意しなければならないのは、あくまで買い増しのタイミングを計る判断材料の1つとして使用する事です。

つまり、200日移動平均線を基準に買いを入れたけど、その後に思うように動かなかったから売却しようとか、そのような戦略は取るべきではありません。

ちょっとでも安く仕込みたいというのは誰もが思う事ですが、そのような考えは往々にして裏切られます。200日移動平均線を基準にすることで、結果的に安く仕込むことが出来て良かったと、その程度に考えるべきです。

ここからは実際に私が保有しているETFを使い、200日移動平均線の有効性を確認してい見ます。

その前にもの凄く重要な事。チャートは後出しです。後出しジャンケンなら誰でも勝てますよね。そういう事です。スイングトレードでテクニカル指標を武器にしていた私が言うのですから間違いありません(笑)

HDV【iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF】

現在の主力ETFです。コアと名の付くように、ブラックロック社が資産形成の核となるようにと考案したETFです。ブラックロック社の方から聞きましたが、一時期、同じ高配当系ETFであるDVYからHDVへの資金流入もあったそうです。今後のさらなる躍進に期待。それがHDVです。

確かに200日移動平均線を支持線としているようにも見えますね。

VYM【バンガード®・米国高配当株式ETF】

HDVのライバル的存在に位置するのがバンガードのVYMです。私はどちらかと言うとHDVの方が好きですが、VYMも優良ETFには違いありません。HDV1本でも良いと思いますし、VYM1本でも十分かと思いますが、それではつまらないのであえて両方保有しています。

こちらもHDVと同じですね。200日移動平均線が支持線の役割をしています。

VDC【米国バンガード生活必需品ETF】

生活必需品セクターはディフェンシブです。ディフェンシブという事は景気敏感株ではないという事。つまり、不景気でも下値は限られるという事です。フィリップモリス、プロクター&ギャンブル、アルトリアグループ、生活必需品セクターには長期投資向きの魅力的な企業がたくさんあります。しかし、私はあえてETFにて投資をしています。ETFならば個々の企業の業績や突発的な悪材料に左右される事がない。まさに優柔不断な私にピッタリなのです。

注目すべきはリーマンショックによる下落幅の小ささです。加えてそこからの上昇率です。下落局面ではディフェンシブの特性を最大限に発揮しつつも、上昇局面ではディフェンシブの名に似つかない程の上昇を見せる。

長期保有に相応しいETFです。こちらも他のETFと同じく200日移動平均線がサポートラインとして機能しています。

VOO【バンガード・S&P500ETF】

比率はそこまで多くありませんが、VOOも保有しています。やはりシーゲル氏の影響を強く受けながらもウォール街のランダムウォーカーも愛読しておりますので、時価総額加重型ETFもポートフォリオに入れておきたいという考えがあるためです。S&P500にひたすら投資をする。実際はこれだけでも十分すぎるリターンが期待できると思います。

チャートの形状は他のETFとあまり変わりありませんね。すなわち200日移動平均線もそれなりに機能していると見えるわけです。

200日移動平均線の使用例

では、200日移動平均線をどのようにして長期投資に活かしていけば良いのか?

考え方は簡単です。

①200日移動平均線よりも株価が大分上の方にある時は様子見に徹してみる。徐々に株価が調整し、移動平均線に近付いてきたら買ってみる。

②200日移動平均線よりも株価が下にある時は、本格的な下落相場突入の可能性もあるため様子を見てみる。再び移動平均線を超える素振りを見せたら買ってみる。

せいぜいこの程度ですね。アメリカ市場はリーマンショック以降、長きに渡る上場相場を見せていますから、その間に米国ETF投資始めた人は下落相場を知りません。故にスイングトレーダーのように移動平均線を割込んだから利益確定しようとか、積極的な売却を求める戦略は失敗するので止めましょう。あくまでもバイ&ホールド前提です。繰り返しになりますが、買い増しのタイミングを判断する時に補助的にテクニカル指標を使うだけなのですから。

結局のところ、株価は200日移動平均線に戻ってくる性質があるから、乖離が進んでいたらちょっと様子を見てみようという事です。

200日移動平均線使用の疑問

さてさて、後出しジャンケンならば200日移動平均線はそれなりに有効?かもしれないと分かりましたね。

しかし、ここである種の疑問点が出てきます。

以下のチャートを見てください。

VOO日足チャート

例えば、赤丸で囲った部分のように、なかなか移動平均線に戻って来ない場合も見られます。力強い上昇の時に表れやすいチャートの形状ですが、このような時はテクニカル指標が機能しません。つまり、テクニカルに忠実な人ほど強い上場の波に乗れない、機会損失を被る可能性があるのです。

確かに、緩やかな上昇トレンドの時は200日移動平均線は大いに役立つでしょう。しかし、力強い上昇の時はその機能を果たさない。

この先のトレンドが緩やかか力強いかなんて分かりませんし、押し目待ちに押し目無しの通り、待っている時に限って調整せずに爆上げする可能性すらあります。

結論をまとめます。

200日移動平均線は支持線としての機能を果たすけど、それが機能する時と機能しない時を見極めるのは非常に困難。だから個人投資家のバイ&ホールド戦略の補佐的な役割として取り入れる程度にしておいた方が無難です。

NYダウと200日移動平均線の検証結果は?

ジェレミーシーゲルの著書「株式投資」にNYダウと200日移動平均線の関係性について検証した興味深いデータが有ったのでご紹介します。

ちなみに、シーゲルの著書には「株式投資の未来」の他に、「株式投資 長期投資で成功するための完全ガイド」という本があります。どちらかと言えば前者がが有名ですが、こちらも素晴らしい書籍となっていますので、長期投資を志すのならば一度は目を通すことをおすすめします。

検証にあたってシーゲル氏が採用した基準は以下の通りです。

①NYダウの終値が200日移動平均線を少なくとも1%上回った時に終値で株式を買う。

②終値で少なくとも1%下回った時は株式を売り、売却金は短期国債に回し、利息収入を得る。短期国債とは言ってみれば価格変動リスク、デフォルトリスクが最も低い&利回りも低い債券の事です。

なぜ1%以上を基準にするかと言うと、これは短期売買をやったことがある方ならすぐにピンと来るかもしれませんが、無駄な売買を避けるためですね。株価は移動平均線付近ではもみ合いになる傾向があります。つまり、単に移動平均線を下回った、上回ったで売買してしまうと取引コストと小さい損失が積み重なってしまうからです。だから、あえて変動幅を1%以上とすることでリスクを軽減しようとしたわけです。

さて、この方法と単なる買い持ち戦略、果たしてどちらが有効なのか?

その検証結果が以下になります。

※株式投資のデータを元に当ブログが簡易的表示のため再編集しました。なお、売買コストは売買金額×0.5%で計算されています。

タイミング戦略と買い持ち戦略の年率利回り(1886年1月~2006年12月)

期間 買持戦略 タイミング取引  売買回数 
取引コスト除く 取引コスト含む
①1886~1925 9.08% 9.77% 8.11% 122回
②1926~1945 6.25%  11.10% 9.44% 60回
③1946~2006 11.23% 10.21% 8.70%  168回
1886~2006 9.68% 10.21% 8.63%  350回

 

①~③のそれぞれの期間ではコストを含めた場合は、タイミング取引の1勝2敗。

じゃあ合算して1886年~2006年までのデータで比べてみると、取引コストを考慮しない場合はタイミング取引が勝っていますが、取引コストを考慮すると買い持ち戦略を下回ってしまいます。実際のところ、現代では売買コストも低価格化していますので、コストがここまで掛かるかは疑問です。しかし、それを差し置いてもタイミング取引に明らかな優位性と言うのは認められません。

タイミング取引の有効性

じゃあタイミング取引の有効性ってどこにあるのという事ですが、暴落を回避できるという点にあります。先程の検証では、200日移動平均線を少なくとも1%下回った時は株式を売るというルールがあります。

という事は、そうです。歴史的な暴落を最小限の損失で回避できるという事です。

1929年に起きた世界大恐慌は、株式市場にも甚大な損失をもたらしました。

以下、世界恐慌時前後のNYダウ日足チャートです。

青いラインが200日移動平均線です。

ジェットコースター、恐ろしい。しかもすぐに反発するでもなく、長期に渡る下降相場へと突入しているのが分かるかと思います。

確かに先ほどのルールを適用していた場合、この暴落には巻き込まれずに済みますよね。ただ、全体の期間で見れば、リターンにそれ程の影響があるとは言えない、その他もっと短いスパンで見ても明らかな有効性があるかは疑問という事になります。

この考えは短期売買とも通ずる部分があります。短期売買には自らの裁量を加えたルールが存在しますが、これを守れば大損だけは避ける事が出来る。しかし、トータルプラスになるかは分からない。

結局タイミングを見計らって買ったり、売ったりするのは難しいという事ですね。

まとめ

まず、本記事の前半部分は長期投資における買い増しのタイミングとして200日移動平均線は有効か?と言う点について検証してみました。

後半部分は200日移動平均線を利用したバックテスト、タイミングを見計らった取引と単なる買い持ち戦略はどちらが有効であるかをシーゲル氏の著書のデータを元に検証しました。

まとめると

①バイ&ホールド前提の長期投資において、200日移動平均線を補助的に使い、買い増しのタイミングを見極める材料の1つにするだけなら有り。

②しかし、200日移動平均線を基準に売却のタイミングを見極めるのは、止めた方がよい。

という事になります。

今回の趣旨は長期投資におけるテクニカル指標の有効性を検証する事ですから、②の例だとそもそも長期投資ではありませんから、ナンセンスなお話ですよね。

ただ、1つの参考例として、タイミングを計る売買がいかに難しいかをご紹介したかったので、取り上げたまでです。

20年、30年保有する前提なら、タイミングはそれ程重要ではないという事です。ただ人間は目先の利益に左右される傾向もありますから、200日移動平均線は参考程度にチャートに表示させても良いかもしれませんね。

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