キャッシュフロー計算書が読めれば、企業の資金繰りが分かるようになる

企業のお金の流れをまとめたのがキャッシュフロー計算書になります。その内容は家計簿にも似ています。

キャッシュフロー計算書は企業の資金繰りを管理するもの。普段意識することはないかもしれませんが、企業が存続する上で資金繰りってとても大切な事です。

来月になれば100万円入ってくることが分かっていても、今月末の1万円の支払いが出来なければ、それは倒産に繋がるからです。

企業は潰れる直接的な原因は赤字によるものではありません。明日の支払いが出来なくなることです。それを客観的に表してくれるのがキャッシュフロー計算書なのです。

キャッシュフロー計算書の仕組み

キャッシュフロー計算書は損益計算書と同じようにある一定の期間の資金繰りを表しています(3月決算の場合は4月1日~3月31日)。ちなみにキャッシュフロー計算書には間接法と直接法の2種類がありますが、現在の主流は間接法ですので、それを前提にお話を続けていきます。

キャッシュフロー計算書を見て分かる事は…

  1. 4月1日時点では現金がいくらあったのか?
  2. 現在(3月31日)は現金がいくらあるのか?
  3. 何にどれだけ現金を使ったのか?

そして、3番部分をさらに細かく分けると

1.営業活動によるキャッシュフロー

この部分はプラスである必要があります。営業活動=本業ですから、自動車メーカーが車の販売で赤字を出していたら元も子もありません。しかし、会社設立から日が浅ければ、それなりの売り上げが合っても、この項目がマイナスになる事はあります。なぜなら、売上がいくらあったところで、代金が回収できていなければ、現金は増えないからです。

このような例外を除いて、成熟企業やそれなりに歴史のある企業が、この項目でマイナスを計上していたら、それはかなりまずい事と言えます。

2.投資活動によるキャッシュフロー

企業にとっての投資活動は、生産効率向上や設備投資の観点から見ても非常に大切な事です。ゆえに投資活動によるキャッシュフローがマイナスと言うのは決して憂慮すべきことではありません。

大切なのは、投資活動の効果が営業活動に表れている事。つまり、投資活動と営業活動の2つを合わせてしっかりプラスになっている事です。

3.財務活動によるキャッシュフロー

財務活動によるキャッシュフローは、借り入れによる資金の調達と、借り入れた資金の返済によって成り立っています。

営業活動と投資活動を合わせた、本業によるキャッシュフローが好調であれば、稼いだ利益により借入金を返済していくので、財務活動によるキャッシュフローマイナスになる傾向にあります。

逆に、本業が不調であれば、その分を借入金により補おうとするため、この項目はプラスになる傾向にあります。

また、投資活動が活発な新興企業などは、積極的な資金調達により、投資活動をしていきますので、他の2項目がプラスでも、財務活動によるキャッシュフローもプラスになるという例もあります。

キャッシュフロー計算書の構成

キャッシュフローは以下の7つの項目から構成されています。

営業活動によるキャッシュフロー 5,000,000
投資活動によるキャッシュフロー -2,000,000
財務活動によるキャッシュフロー -1,000,000
現金及び現金同等物に係る換算差額 0
現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額 2,000,000
現金及び現金同等物の期首残高 5,000,000
現金及び現金同等物の期末残高 7,000,000

 

上3つの項目は先ほど説明した通りですので、その下の4項目について軽く説明しておきます。

現金及び現金同等物に係る換算差額は、簡単に言えば為替レートの変動による影響の事です。

現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額は、4月1日と比べて、現金がどの程度増減したのか。

現金及び現金同等物の期首残高は、4月1日時点での現金の残高。現金及び現金同等物の期末残高は、3月31日時点での現金の残高を指しています。もうお分かりだとは思いますが、キャッシュフロー計算書の見方自体は然程難しいものではありません。

損益計算書、貸借対照表、キャッシュフロー計算書の関係は?

具体的なキャッシュフロー計算書の分析に入る前に、損益計算書・貸借対照表・キャッシュフロー計算書の関係性を確認しています。

損益計算書の当期純利益は貸借対照表の繰越利益剰余金に、損益計算書の税引前当期純利益はキャッシュフロー計算書の営業活動によるキャッシュフローの先頭へと繋がっています。

それぞれの表を独立して考えるのではなく、最低限の関連性を理解することが大切です。

ファナックのキャッシュフロー計算書を読む

それでは、超優良企業であるファナックのキャッシュフロー計算書を見てみましょう。

 ファナックキャッシュフロー計算書簡易版 単位:百万円
営業活動によるキャッシュ・フロー 
税金等調整前当期純利益 168,829
減価償却費 26,530
貸倒引当金の増減額(△は減少) △239
退職給付に係る負債の増減額(△は減少) 3,178
受取利息及び受取配当金 △3,789
持分法による投資損益(△は益) △10,022
売上債権の増減額(△は増加) △17,386
たな卸資産の増減額(△は増加 △16,519
仕入債務の増減額(△は減少) 11,292
その他 △6,470
小計 155,404
利息及び配当金の受取額 8,562
法人税等の支払額 △43,039
その他 786
◆営業活動によるキャッシュ・フロー合計 121,713
投資活動によるキャッシュ・フロー 
有形固定資産の取得による支出 △87,509
その他 △1,053
◆投資活動によるキャッシュ・フロー合計 △88,562
財務活動によるキャッシュ・フロー 
自己株式の取得による支出 △13,481
配当金の支払額 △76,505
その他 △281
◆財務活動によるキャッシュ・フロー合計 △90,267
◆現金及び現金同等物に係る換算差額 215
◆現金及び現金同等物の増減額(△は減少) △56,901
◆現金及び現金同等物の期首残高 831,662
◆現金及び現金同等物の期末残高 774,761

 

本来ならば、一つひとつの項目を丁寧に説明するべきなのですが、それでは財務諸表に対する苦手意識が再燃してしまうでしょう。ちなみに、一番上の税金等調整前当期純利益は税引前当期純利益と解釈して頂いて構いません。

当記事の目的は、キャッシュフロー計算書を読めるようになることであって、細かな知識を得る事ではありません。

…という事で、上記CF計算書をもっと見やすくしてみました。

 ファナックキャッシュフロー計算書簡易版 単位:百万円
営業活動によるキャッシュフロー 121,713
投資活動によるキャッシュフロー △88,562
財務活動によるキャッシュフロー △90,267
現金及び現金同等物に係る換算差額 215
現金及び現金同等物の純増加・減少(△)額 △56,901
現金及び現金同等物の期首残高 831,662
現金及び現金同等物の期末残高 774,761

 

正直これで十分です。キャッシュフロー計算書で大切なのは、当期の数字だけでなく、前期の数字のと比較するところです。これは、貸借対照表、損益計算書共に変わりありません。また、同業他社と比較することも重要です。

上記表を見ると、4月1日よりも現金の残高が少なくなっています。入って来たお金よりも出て言ったお金の方が多い。キャッシュフロー計算書だけ見ればそのように見えてしまいます。しかし、前述したように、売上が発生しても代金を回収できずに売掛金や支払手形として残っていれば、その分は反映されません。

このようにキャッシュフロー計算書にはそれ特有の見るべきポイントと言うのが存在します。それを今から解説します。

キャッシュフロー計算書の見るべきポイント

これまでの説明でキャッシュフロー計算書に対する基本的事項は理解して頂けたかと思います。

しかし、キャッシュフロー計算書はそれ単体で読むものでなく、損益計算書・貸借対照表と照らし合わせながら見る事で、正確な分析が出来ます。

ここでは、そのために必要なポイントを整理していきます。

売上=現金の増加ではない

先程サラッとお話しましたが、キャッシュフロー計算書はお金の出入りを記録しています。ゆえに例え売り上げがあったとしても、その代金が回収されていなければ現金は増えません。

企業は売上の代金をツケにしたり(売掛金)、手形で受け取ったりしています(受取手形)。また、商品を掛けで仕入れた場合(買掛金)や手形で支払った場合(支払い手形)は実際に支払いが行われるまで現金は減りません。

仮に掛けで買い、現金で売ったのならば、売上原価を差し引いた額ではなく、受け取った現金がまるまるプラスされる事になります。

この関係性を整理すると

  1. 売掛金と受取手形の減少:現金収支はプラス(代金回収のため)
  2. 買掛金と支払手形の減少:現金収支はマイナス(代金支払いのため)

このようになります。

CF計算書の現金及び現金同等物の期末残高と貸借対照表の現金預金は必ずしも一致しない

普通に考えれば貸借対照表の現金・預金とCF計算書の現金及び現金同等物の期末残高は一致しそうなものです。しかし、これらは必ずしも一致するわけではありません。その理由を説明いたします。

連結財務諸表等におけるキャッシュ・フロー計算書の 作成に関する実務指針によると、現金及び現金同等物は次のように説明されています。

・現金

現金とは、手許現金及び要求払預金を言います。

手許現金とは手元にあるお金の事です。対して要求払預金とは、普通預金・当座預金・通知預金などを指しています。しかし、預入期間の定めがある定期預金はこの要求払預金には含まれません。

・現金同等物

現金同等物とは、容易に換金可能であり、かつ、価値の変動について僅少なリスクしか負わない短期投資をいいます。僅少なリスクとありますから、市場で売買されている株式等は現金同等物には含まれません。

貸借対照表の現金・預金には3ヵ月を超える定期預金も含まれています。また、CF計算書の現金同等物には有価証券も含まれていますので、両数字は必ずしも一致するわけではないのです。

フリーキャッシュフローを確認する

フリーキャッシュフローとは、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフローを足したものです。

本業により稼いだお金から、投資に回したお金がを差し引くと、現在の余剰資金がわかります。この余剰資金を元にこれまでの借金の返済が行われます。

余剰資金は多ければ多い程良い…とは必ずしも言えません。前述したように、企業は投資活動を通じて利潤を拡大させていきます。投資活動に資金を回さない=保守的な企業が今後も生き残っていけるのかと考えてみると、これは業種や企業の成熟度により大きな差はありますので、はっきりとした答えは出せません。

しかし、間違いなく言える事は、フリーキャッシュフローがマイナスの企業は資金繰りに苦しんでいるという事です。当然マイナス分は、どこからか調達する必要が出てきます。その内容が財務活動によるキャッシュフローに該当するのです。

投資や借金は特に若い企業には必要な事です。目先の利益にこだわり過ぎず、将来を見据えるというのは、我々の実践する株式投資にも通じるものがあります。

資金繰りの悪化=黒字倒産に繋がる可能性も

キャッシュフロー計算書では、売掛金の未回収分は差し引かれる事になっています。先述したように、売上が発生しても現金が発生しないのは、この未回収の売掛金によるものです。

仮にこの売掛金が必ず回収できる予定であったとしても、現金の残高が少ない事はあまり宜しくありません。

冒頭で述べたように、企業の倒産=赤字によるものではありません。企業が倒産する直接的な原因は、資金繰りに悪化により、支払いが出来なくなった時です。

極端な話、まだ回収していない分の売掛金が1億円あり、来月中旬には現金として入ってくると分かっていても、どこもお金を貸してくれず、目先の支払いが出来なければ、それは倒産に繋がります。

まとめ

キャッシュフロー計算書は、出てく用語自体はイマイチピンと来ないものの、その内容が家計簿に似ている事から、比較的理解しやすかったかと思います。

財務諸表が読めるようになるためには、ある程度の基本的知識を身に付け、あとはひたすら見る事です。過去と比べ、他社と比べ、それを繰り返すうちに自然と読みこなせるようになってくるはずです。

財務諸表の分析は、PERやPBRなどの基本的指標よりも重要です。さあ、気になる企業のホームページにアクセスし、財務諸表をひたすら見てください。

短期投資ならばともかく、長期投資家には必須の科目。それが財務分析です。

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