インフレが株式・債券に与える影響と物価連動債について解説してみる。

インフレの進行する世界では、株式を持たざるリスクが生じます。定期預金や債券等も金融商品には違いありませんが、これらはインフレ進行下では価値が目減りするという特性があるからです。

経済成長が継続するためには緩やかなインフレが最も適していると言われています。今回はインフレが株式・債券に与える影響と、インフレ下においても価値が目減りしない商品、物価連動債について解説します。

インフレとは?

インフレとは物価が持続的に上昇する事です。例えば、これまで100円で買えていたものが110円になったとしたら、相対的に通貨の価値は下落しますから、物価上昇=通貨の価値が下落、という図式が成り立ちます。

物価が上昇と言ってもいまいちピンと来ませんが、100年前と現在の100円の価値は違いますよね。簡単に言えばそういう事です。

例えば、1970年の大学卒業者の初任給は39,900円でした。対して2016年の初任給は205,900円です。前者と後者のお金の価値が同一であるとするならば、39,900円では安すぎて生活どころではありませんよね。高校生のバイト代みたいなものです。このような現象が起きるのは当時と比べ、お金の価値が下がっているからなのです。

大卒者男子の初任給の推移【データソース:厚生労働省のホームページ】

バブル景気の終りが見えてきた1991年頃までは緩やかな上昇を見せています。しかし、それ以後はほぼ横ばい。日本の経済成長自体が鈍化傾向にあると言えるでしょう。

消費者物価指数の推移【データソース:総務省統計局】

消費者物価指数とは、基準となる年を100として、そこからどの程度物価が上昇しているのかを計る指標です。

上記グラフを見ても分かるように、バブル景気崩壊後は横ばいでの推移。消費者物価指数が横ばいという事は、それを元に算出するインフレ率も低水準という事です。

日本のインフレ率の推移

出典元:世界経済のネタ帳

インフレ率とは今年度の消費者物価指数が前年度に比べ、どの程度上昇してるかを表した指標です。リーマンショックによってマイナス圏に突入するも、日銀の大規模金融緩和とアベノミクスにより一度は回復の兆しを見せました。

しかし、その後は再び低迷。経済成長に必要なのは一時的ではなく、持続的な緩やかなインフレですから、それが訪れるのはいつになるのやら…。

ちなみに、アメリカの消費者物価指数とインフレ率の推移を見てみると

アメリカ消費者物価指数の推移

出典元:世界経済のネタ帳

アメリカと日本のインフレ率の比較

出典元:世界経済のネタ帳

この傾向が今後も続くとは限りませんが、投資対象として魅力的なのはどちらか…。一目瞭然ですね。

緩やかなインフレが経済成長に望ましいのは何故?

そもそもなぜインフレが起きるのでしょうか?

インフレとは物価が持続的に上昇する事です。物価が上昇するという事は、供給に対して需要が上回っている事。つまり、我々国民の購買意欲が強い事が1つの要因として挙げられます。

需要が供給を上回れば、企業はより多くの製品・サービスを提供しようとします。そうすれば企業の生産も増加し、その結果利益は増え、雇用も拡大します。企業の利益が増えれば、労働者の給料も上がりますから、それに合わせて家計の消費量も増える事になります。このサイクルにより世の中にはお金が回るようになります。

ただし、インフレ(物価上昇)が進行したとしても、需要が伴わなければ経済にはプラスの作用をもたらしません。例えば、生産者側のコスト増加による物価上昇の場合は、直接的な需要が増加したわけではありませんから、企業の利益増加には貢献しません。むしろ、価格上昇による売上減少で、利益自体が減ってしまう可能性があります。利益が減れば労働者の給与も減らされてしまいます。このように資産コストの増加により物価が上昇することを「コストプッシュインフレ」と呼びます。また、それに伴い、景気後退と物価上昇が進行することを「スタグフレーション」と呼びます。

前者のインフレと後者のインフレはその内容が明らかに違います。前者は世の中にお金が回り、経済が成長する=良いインフレ、後者は経済が停滞しているのに物価だけが上昇している=悪いインフレ、このように考える事が出来ます。

また、お金の価値が下がれば、実質的な借金が減少することになりますから、企業の設備投資も活発になります。この事からも、緩やかなインフレが経済成長に必要であるということが分かります。

その他に、市中に出回る貨幣の量を増やし、相対的にモノに対する貨幣の価値を低下させるという方法もあります。これにより、企業の設備投資が活発になり、結果として需要が増え、それがインフレに繋がるという考え方です。日銀の量的緩和政策はこれに該当しますが、いくら貨幣流通量を高めても、企業が利益を内部にため込んでばかりいたら世の中にお金は回りません。また、私のような物欲の無い人間も日本経済活性化のためには邪魔な存在と言えます。

インフレ進行により株と債券はどうなる?

インフレが進行するとお金の価値が減っていきます。今まで100円で買えたものが110円出さないと買えなくなるという現象が起きます。

先程も言いましたが、この感覚は私は体験したことがありません。なぜなら、物心がついた時には、日本が既に長期に渡るデフレへと突入していたからです。

話を戻して、お金の価値が減るなら投資をしなければ損ですよね。だって銀行に預けていているだけでも実質的なお金の価値は減っていくのですから。

では、一体何に投資をすればインフレから資産を守る事が出来るのか。投資先として代表的な債券と株式について考えてみます。

債券

債券はデフォルトしない限り元本+利息が約束された金融商品です。短期的には債券自体にも価格変動リスクが生じますが、満期まで保有し続けていれば、利息分だけ得をすることになります。

例えば、以下の条件でとある企業の社債を購入したとします。

  1. 額面:100万円
  2. 年利:2%
  3. 償還期限:2年

上記債券を購入すれば、2年後には100万円が返ってきますし、利息も4万円確実に受け取る事が出来ます。

インフレによって金利が上昇したとしても、その分債券価格が下落しトータルで見ればトントンですが、継続的に物価が上昇する局面では実質的な価値が減少することになります。

これは逆の立場で考えるとすんなり理解出来ます。

あなたが誰かから100万円の借金をしたとします。しかし、インフレが進行すれば実質的な借金は減る事になります。以前は100円で売ってモノが103円に上昇していたとしても、返済するのは100万円のみですかから、借り手は得をする事になります。

インフレ下では、お金を借りている人は得をし、お金を貸している人は損をする。債券投資とは債券を買う事で、企業や国へお金を貸す行為ですから、債券はインフレに弱いという事になります。

株式

株価は、短期的には投資家心理、経済情勢等の様々な要因を織り込みながら推移するので、絶対的な予測は出来ませんが、長期的には企業の業績と相関する傾向があります。

前述したように、物価が上昇すれば、企業の業績も上昇します。ただし、良いインフレ(需要が供給を上回っての物価上昇)における話ですが。また、良いインフレ=経済成長に繋がる事も企業業績にはプラスとなります。

債券は、物価上昇分が自らの資産の目減りを意味しますが、株式に関しては、物価上昇分株価も上昇するため、インフレに強いという傾向があります。

繰り返しになりますが、現在の日本では長期的なインフレを実感しづらい状況にあります。トータルで考えても長期で株式を運用するならアメリカ市場。この考えは当面の間揺るぐことはないでしょう。

物価連動債について

前述したように、国債を保有していたとしても、インフレが進行すれば将来のリターンは物価上昇率分だけ損をしてしまう事になります。

そんな時に役立つのが物価連動債です。日本における物価連動債は、生鮮品を除く全国消費者物価指数(コアCPI)に連動する債券です。日本でも2004年3月から発行が開始されたものの、一時はリーマンショックによる国内経済悪化から発行を見合わせていました。2013年10月からは再び取引が開始され、その後は個人にも取引の拡充が予定されましたが、日本経済のインフレ期待への低迷から販売は延期となっています。

物価連動債の仕組み

それでは、物価連動債の仕組みを簡単に説明してみます。

物価連動債は消費者物価指数(以下CPI)に連動する商品です。また、現在日本で発行されている物価連動債は額面保証付き、つまり、デフレによりCPIが減少したとしても額面は保証されるという仕組みなのです。

ここで勘違いしやすいのが、額面保証と元本保証は違うという事です。例えば、現在の国債は入札により発行価格が決められています。将来、国債の価格が上昇すると市場参加者達が考えれば、当然ながら新たに発行される国債の価格も上がります。これが長期金利のマイナス圏突入にも繋がってくるわけです。

物価連動債についても考え方は同じ。例えば、将来のインフレ予想が高く、発行価格が高くなれば額面価格との差が広がります。額面価格100万円の物価連動債の発行価格が105万だったとして、仮に満期時に102万円まで債券価格が下落していたとしても、保証されるのは100万円だけです。

また、物価連動債も他の国債と同じく利率は固定です。ただし、CPIが2%上昇すれば額面価格も2%上昇します。利率は額面により計算されますので、CPIが上昇すれば結果として貰える利息も増える事になります。

繰り返しになりますが、個人で物価連動債を購入することは今のところ出来ません。そもそも、インフレ期待の薄い日本の物価連動債を買う事に意味があるのかは疑問ですが、それでも欲しければ投資信託を通じての購入は可能です。

また、アメリカの物価連動債もETFを通じて購入が可能です。前述したようにアメリカの消費者物価指数は毎年緩やかに上昇していますから、日本の物価連動債よりかはまだ投資価値があると言えます。

TIP【iシェアーズ 米国物価連動国債 ETF】

TIPは米国物価連動債をベンチマークとしたETFです。

アメリカ消費者物価指数の推移

出典元:世界経済のネタ帳

ご覧のように、日本とは違い、現在も緩やかながらも上昇しています。

TIP基本情報【2017年10月24日現在】

設定日 2003年12月4日
純資産 2兆1000億円
平均出来高 886,284
分配利回り 0.50%
経費率 0.20%
銘柄数 35

純資産を見れば、それなりに需要がある事は分かります。

投資対象は全て米国物価連動債ですが、銘柄数が35あるのはそれぞれ残存期間の違う債券を組み込んでいるからですね。インフレ対策なら物価連動差よりも株式を持った方が良いかとは思いますが、知識の一つとして覚えておくことに損はないかもしれません。

TIP月足チャート

まとめ

世の中にはありとあらゆる金融商品があります。しかし、知れば知る程、株式投資の有効性を再確認するばかりです。

今回ご紹介した物価連動債も、知識として知るには面白いのですが投資をしようとは思いません。特にその対象がインフレ期待の低い日本であるならば尚更です。

目先にリセッション(景気後退)のあるアメリカ市場ですが、それでも株式を保有し続けた方が将来のリターンには期待できそうです。

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