個別株投資に向いている人、いない人【長期投資に適しているのは個別株とETFのどちらか?】
長期投資に相応しいの個別株かETFか。タイトルの通り、個別銘柄に向いている人もいれば、そうでない人もいます。つまり、どちらが適しているかは人によるという事です。
ただし、より高いリターンを狙いたい場合は、明らかに個別株投資に軍配が上がります。
現在はS&P500のような時価総額加重型だけでなく、高配当、バリュー等のスマートベータETFも多く開発されています。だからこそ、無理に個別株を買わなくても、様々な戦略がETFオンリーでも可能となってきました。
ETFは個別株に比べると明らかに非効率。しかし、その非効率さは逆を考えると、結果としては効率的な投資にも繋がるのです。
以上を踏まえ、アメリカ市場における投資戦略について検証してみます。
目次
個別銘柄のメリット・デメリット
個別銘柄のメリット
個別銘柄のメリットは「企業への投資」を実感できる点にあります。ETFでも上位構成銘柄については大まかにしておく必要がありますが、個々の企業を詳細に分析する必要性はありません。
個別株では投資先の企業を分析する必要があるため、業界分析や財務分析、ビジネスモデル等々銘柄選定のためのあらゆる知識が身に付きます。その分析自体が正しいかどうかは別として、様々な分析をすることは投資力の向上に繋がります。
分析という手間が掛かる分、投資が楽しくなります。企業への思い入れも強くなります。情報にも敏感になります。この感覚はETFでは実感しづらいのです。
また、長期投資と言っても割安な株価で購入することは将来のリターン最大化に大きく貢献します。ETFは個別銘柄の集合体です。ETFを安く買いたいとしたら、市場全体の暴落時を狙うしかありません。
対して個別銘柄は、決算、一時的な悪材料等々、バーゲンセールで仕込めるチャンスがETFよりも多く存在します。突発的な株価変動リスクは、裏を返せば割安な株価で購入する絶好のチャンスとなるのです。
個別銘柄のデメリット
個別銘柄のデメリットは、メリットのそのまま逆になります。
自分で銘柄選定を行うためには、それなりの知識が必要ですし、手間も掛かります。しかも、その分析が正しいとも限りませんし、仮に正確な分析が出来たところで、将来の株価を正確に予測することなど出来ません。多忙な社会人にとっては分析の時間を捻出する事自体が難しいとも言えます。
また、個別株はETFに比べ、割安で買えるチャンスが多くあると言いましたが、その暴落で投げ売りしてしまっては元も子もありません。バフェットはこのような時こそ、買いのチャンスであると言ってはいますが、それを個人投資家が見極める事は非常に難しいのです。
少し前にバフェットによるゼネラルエレクトリックの全株売却や、IBMの一時売却報道がありました。個人投資家は影響力のある人物の売買にも左右される傾向があります。バフェット程の人物が売却すれば、その企業に見切りをつけたのかと不安になり、自らも投げ売りしてしまう。これはある意味仕方のない事ともい言えます。
ETFのメリット・デメリット
ETFのメリット
ETFの最大のメリットは銘柄選定の必要が無いという事です。アメリカ市場と言えど、有名企業のデータは入手可能ですから、分析に関してはそれほど不自由しません。とは言っても企業分析は手間です。面倒です。時間のない現代人にはその時間すらありません。それらを一気に解決してくれるETFは個人投資家にとって魅力的な商品と言えます。
ETFの運用は非常に透明性があり解りやすいです。ベンチマークとの乖離を見ればETFが適正に運用されているか分かりますし、特に海外ETFに関しては低コスト化が進んでいるため、無駄な費用も発生しません。取引もリアルタイムで行なう事ができ、個別銘柄と何ら変わりはありません。
投資信託と違い、ETF内の構成銘柄が常に公開されているので、その点も安心と言えます。また、個別銘柄の集合体と言う特性上、個々の銘柄の突発的な暴落による影響も微々たるものです。市場全体の下げはどうしようもありませんが、それ以外については分散力がカバーしてくれるのです。
近年では、スマートベータ指数の登場により、ETFによる高配当戦略も手軽に実践できるようになりました。時価総額加重型以外のETFの登場は個人投資家の選択肢をグッと広げてくれました。
ETFのデメリット
ETFは個別銘柄の集合体ですから、個々の企業分析は然程重要ではありません。これはメリットでもありますが、投資に対して熱心な人はいずれ物足りなくなるでしょう。知識吸収に貪欲な人ほど、個別銘柄で運用したくなるのです。
さらには、ETFポートフォリオ内の銘柄入れ替えに納得がいかないという事態も起こり得る可能性があります。ちょっと前に高配当系のETFであるHDVからジョンソン&ジョンソンが除外されました。理由は株価上昇による配当利回りの低下です。HDVがベンチマークとしているモーニングスター配当フォーカス指数は、一定以上の配当利回りを銘柄組入れの基準にしていますから、それにJNJが引っ掛かってしまったのですね。
しかし、ジョンソン&ジョンソンと言えば長期投資における鉄板銘柄です。絶大な信頼とブランド力を誇り、安心して長期保有できる王道銘柄でもあります。そんなJNJを手放してしまうのは如何なものか。ETF、特にスマートベータ指数に連動する商品を保有している以上は、今後もこのような事態は十分に起こり得るでしょう。逆の言い方をすれば、これを許容できなければ個別銘柄に切り替えるしかないという事です。
また、ETFには個別銘柄特有のバーゲンセールがありません。割安で仕込めるのは市場全体が暴落した時だけです。故にその機会は個別銘柄よりもかなり少なくなります。個々の影響を相殺できるというメリットの裏にはこのようなデメリットも存在するのです。
ETFは非効率+個人投資家はもっと非効率=効率的
S&P500を代表とする時価総額加重型インデックス、これには個別では絶対に投資をしたくない企業も含まれています。何たって市場平均ですから、この辺りは仕方がありません。また、スマートベータ指数によるETFも自分にとって不本意な銘柄入替のリスクが常に付きまというという事もお話した通りです。
後者は別としても、前者は明らかに非効率と言えますよね。だって、これをTOPIXに置き換えれば、タカタ(現上場廃止)や東芝(現東証二部)などの株式も間接的に保有する事になるのですから。まあ、不祥事は後付けとしても、市場全体を買うとすれば当然ながら「クズ株」も少なからず含まれているわけですから、それを考えればETFへの投資は非効率とも言えます。
また、時価総額加重型の指数は必然的に割高株を多く保有し、割安株の割合が少なくなります。投資における基本は安値で仕込むことですから、これ自体も効率的な投資とは言えません。
しかし、個人投資家はETFとは比べ物に程非効率な行動、思考をしています。あれこれ調べて購入したは良いが、ちょっとした悪材料で投げ売りしてします。絶好の買い場とは分かってはいても、それにどこか懐疑的になってしまうのです。結局のところ、売却する理由は尽きる事はありません。それが故に不要な取引を繰り返し、無駄な税金と無駄なコストばかりを掛けてしまうのです。
それを考えれば、最初からETFに投資をする事こそが個人投資家に出来る最も効率的な選択肢となるのです。
個別銘柄の向いている人、いない人
よく見かける回答が、「企業分析のしっかり出来る人は個別銘柄でも良い」という意見です。
これは半分正解で半分間違いです。なぜなら、個人投資家の分析には限界があるからです。企業の決算書をみれば財務の健全性が分かりますし、事業内容を見れば、それが今後も必要とされる無いようであるかが分かります。だからこそ、生活必需品セクターの中でもブランド力のある企業に投資をする事が、長期投資の最適解として語られる事に間違いはありません。
しかし、前述したように、個人投資家は様々な理由により持ち株を売却してしまう傾向にあります。
故に個別銘柄が適している人は、分析力のある人よりも
絶対に売却しないで保有し続けるという強い意思
を持った人になります。
まあ、企業の存続に関わる可能性があれば売らなければなりませんが、それを適切に判断するのは少々難しいです。ただし、ちょっとした悪材料ですぐに売る事だけは推奨しないという事です。
原油価格が低迷しているからと言ってエクソンモービルやシェブロン等を手放す必要はありませんし、バフェットが売却したからと言ってゼネラルエレクトリックやIBMを売る理由にはならないかと思います。
繰り返しになりますが、感情やその場の空気に流されての無駄な売買をするようでしたら、最初からETFを選んだ方が無難です。もっと言えば、優柔不断な人は個別株投資に向いていません。貫徹の意思を持った人のみが、個別銘柄で市場平均を超えるリターンを享受することが可能となるのです。
ただし、売らないという強い意思があったとしても、そもそもの銘柄選定がポンコツだとしたらむしろ逆効果です。日本株においても、ボラティリティの高い新興企業への投資では大半の個人投資家が痛い目を見ています。このような人たちも大人しくETFへの投資をするべきです。
まとめ:長期投資に適しているのはETFか個別株か?
個別銘柄のメリット
- 企業を分析する力が身に付く
- 投資をしているという実感が沸く
- バーゲンセールにより割安に仕込むことが可能となる
- 優良銘柄を長期保有すれば市場平均を超える可能性がある
個別銘柄のデメリット
- 分析の手間が掛かる
- そもそも正しい分析が出来ない可能性がある
- バーゲンセールで買えるとは限らない。投げ売りしてしまう可能性もある
- あらゆる売却理由を乗り越え、保有し続ける事が難しい
ETFのメリット
- 銘柄選定の必要が無い
- 運用に透明性がある
- コストが安い
- 分散投資により、個別株のリスクを軽減できる
ETFのデメリット
- 投資をしている実感が少ない
- スマートベータ指数においては納得のいかない銘柄入替が起こる可能性がある
- ETFの特性上、バーゲンセールは市場全体の暴落時のみ。割安を狙うチャンスが少ない。
- 個別では投資をしたくない銘柄も保有することになる
何だかんだ言っても、ETFが適している人、個別銘柄が適している人は次の2点により決まります。
1.銘柄選定の手間を惜しまないか
2.あらゆる売却理由を乗り越え、長期で保有し続けるという強い意思があるか
上記2点に当てはまる人は個別銘柄でも良いでしょう。しかし、どちらか一方でも欠けているのならば素直にETFに投資することをおすすめします。
ETFですらすぐに売りたくなってしまう人、ちょっとの含み益で利益確定、ちょっとの含み損で損切りしたくなるような人はそもそも長期投資に向いていません。このような人は別の投資スタイルを模索する必要があります。
以前の記事でアメリカ市場への長期投資は驚く程簡単だと言いましたが、「売らない事」こそが最大の難しさとも言えそうです。