HDVの売買回転率何て気にする必要なし。それを理由にHDVを売却する奴は長期投資に向いてないよ。
何を思ったか売買回転率の高さによりHDVの売却を検討する人が結構いるそうです(不安になる気持ちは分かります)。それ自体は自由なのですが、そもそも売買回転率=見えないコストが掛かってるとか、パッシブ運用なのに銘柄の入替が多かったら意味が無いとか、勉強熱心な投資家程あれこれ考えてしまうようですね。
だけど、そんなネット上から得た知識だけで売却の判断をするようでは、長期投資家を名乗る資格はありませんね。HDVがジョンソン&ジョンソンを手放したことに嫌気がさし(気持ちは痛い程分かりますが)、個別銘柄での運用に切り替えたとしても、HDVのパフォーマンスを超える自信があるのですか?
ETFの見えないコストはベンチマークとのトラッキングエラーを見れば分かる
ネットで検索すればそれらしい答えは載っています。私自身もそれを参考にする場面は多々あります。けれど、ETFの運用に掛かる詳細な費用なんて、ファンドマネージャー経験者しかわかりませんよ。ETFにはファンドマネージャーがいないという書き込みを見た事がありますが、ETFにもファンドマネージャーはいます。
この辺りに関しては日本の資産運用会社に問い合わせたりもしましたが、回答にはバラツキがあり、明確な答えは見つかりませんでした。
私のブログも含めネット上での情報なんて間違いもたくさんあるので全てを鵜呑みにしないように。
ETFは指定参加者という制度を使う事によって低コスト化を実現した商品ではありますが、その費用の全てを指定参加者が負担するのか?というとそれも疑問です。
結局、あれこれ考えても答えは出ません。しかし、ETFが適正に運用されているか否かはベンチマークと市場価格とのトラッキングエラーを見れば分かる事なので、そこまで神経質になる必要はありません。
ETFには市場価格と基準価額があります。基準価格ではなく、基準価額です。市場価格は我々が市場で実際に取引している価格の事です。基準価額は簡単に言えば、ファンド内の資産を口数で割ったものです。市場価格はリアルタイムで変化していき、基準価額は1日に1回算出されます。通常の投資信託はこの基準価額でしか取引が出来ませんから、いかにETFが革新的な発明であるかが分かります。
一般的に乖離と言えばこちらを指すことが多く、市場は効率的と考えれば両者の価格は一致するはずですが、実際はそう上手くはいきません。そんな時にその乖離を埋める役割をするのが指定参加者による裁定取引です。
割高な方を売り、割安な方を買うという作業のおかげで我々は適正な価格でETFを買う事が出来ます。
さて、次はベンチマークとのトラッキングエラーについてです。ETFはその特性上、運用の目標となるベンチマークを定め、そのパフォーマンスに追随することを目指します。現物拠出型のETFは現物株バスケットと受益証券を交換することにより、ETFとして我々が取引できるわけですが、その組成法にはいくつかの種類があります。
例えば、ベンチマークと同じ株式を同じ比率保有すれば、それらで構成されたETFも理論的には同じ値動きをするはずですよね。この組成方法を完全法と呼びます。
しかし、ETFの種類によってはこれが困難になるケースも出てきます。例えば、新興国株式や一部の小型株などは流動性の観点やファンド内の純資産の関係から同じ比率を組み込むことが困難になる場合があります。
こんな時は、その銘柄の代わりに別の銘柄で代用したりと応用を聞かせて組成をする場合があります。これは抽出法やサンプリング法などと呼ばれています。
考えてみれば、日経平均株価を構成する上位銘柄、ファーストリテイリング、ファナック、ソフトバンクなどは指数に大きく寄与していますが、最下位の銘柄が日経平均に与える影響なんてないようなものです。それを考えれば日経平均株価に連動するETFだからと言って、225銘柄組み込む必要はなくなります。
また、HDVやDVYなどのスマートベータ系ETFでも指数との乖離を埋めるために、ポートフォリオの極極一部は先物などで一時的に運用したりしています。もちろん、HDVやDVYがベンチマークとしている指数は先物市場に上場してはいませんから、S&P500の先物を使うのでしょうね。この辺りは運用報告書に詳細が記載されています。
ETFとベンチマークのトラッキングエラーは0に近ければ近い程望ましいです。仮にベンチマークを超えている期間があったとしてもそれは結果オーライとはなりません。むしろ超えるという事はその分下回る可能性もあるのですから、デメリットと捉えるべきです。
ここで、HDVのベンチマークとのトラッキングエラーを確認してみましょう。
1年 | 3年 | 5年 | 設定来 | |
基準価格 | 4.66% | 7.04% | 10.73% | 12.01% |
市場価格 | 4.67% | 7.05% | 10.72% | 12.01% |
ベンチマーク | 4.73% | 7.15% | 10.97% | 12.32% |
続いてIVV(S&P500)のトラッキングエラーも確認して見ます。
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 設定来 | |
基準価格 | 17.85% | 9.56% | 14.57% | 7.13% | 5.00% |
市場価格 | 17.83% | 9.57% | 14.56% | 7.13 | 12.01% |
ベンチマーク | 17.90% | 9.61% | 14.63% | 7.18% | 12.32% |
経費率が掛かる分だけベンチマークを下回りますが、それでも微々たるものです。売買回転率が1桁台であるIVVと何ら変わりありませんから、例えHDVに見えないコストが多く掛かっていたとしても、ベンチマークと市場価格のパフォーマンスに差が無い以上、それは問題にならないはずです。
売却理由はいくらでも出てくる
HDV程の優良ETFすら、バイ&ホールド出来ないようでは一生かかっても長期投資家になれませんね。
私は自信があります。
高配当の個別銘柄でポートフォリオを組んでもHDVに負ける自信があります。
以下のチャートを見てください。
HDVの構成比率の高い順に、エクソンモービル(赤)、AT&T(青)、ベライゾン(茶)、シェブロン(緑)、ファイザー(紫)をHDV(ローソク足)と比較したものです。
上位構成銘柄が配当再投資に適した超ディフェンシブ銘柄である事、単なる値上がりだけでは優劣は付けられない事は承知の上ですが、HDVを上回っている個別銘柄はファイザーだけです。それに加えてHDVだって分配利回りは3%超えです。
当ブログでは何度も言っている事ですが、配当再投資戦略だからと言って、ダラダラと下げ続ける銘柄では将来のリターンも押し下げられます。スタンダードオイルがIBMに勝ったのも、IBMには及ばないものの、それなりの成長を続けたことにあります。加えて投資家達からの期待が薄かったというのもあるのかもしれませんが。
しかし、どこをどう間違ったか、ダラダラ下げ続ける高配当株をひたすら買い続ける=シーゲル流みたいな風潮がありませんか?
確かにダラダラ下げ続ける=投資家期待が薄いという事ですし、将来反転した場合を考えればそれなりのリターンを期待できるのかもしれませんが、ちょっと浅はかな気もします。だけど、そんな銘柄にこそ魅力を感じてしまう。その気持ちも十分すぎる程理解出来ます。
何だかんだ言ってもシーゲル流投資は素晴らしい。私も株式投資の未来に強く影響を受けたからこそ、HDVを買っているのですから、言ってみればシーゲル流完全肯定派です。
現在、ディフェンシブ銘柄は明らかな割安圏ではありません。故に、以前程のリターンは望めないのではと考えております。それと同時にS&P500戦略に匹敵する且つ個人投資家が実践できる数少ない投資方法であるとも考えています。
結局、過去の実績が未来においても100%有効であるとは考えてはいません。ですが、未来を知ることが出来ない以上、過去の事実に基づく投資をするのは合理的であると言えます。
結論的には、HDVを手放す必要はないという事です。
まとめ
なんでこんな記事を書いたかと言うと、HDVホールダーである私自身を勇気づけるためです。私自身も時として自らの投資法に疑問を持ち、自問自答する事があります。
そんな不安を払拭するべく書いた記事がこれです。
ここまで偉そうに言っておいて、来年には売ってました、なんて事になったら笑ってやってください。