HDVの銘柄入れ替えについて思う事。ジョンソン&ジョンソンとゼネラルエレクトリックの除外はマイナスか?
モーニングスター配当フォーカス指数をベンチマークとしているHDVは、ポートフォリオの入替が他のETFと比べ多い事で有名です。スマートベータ指数と言う特性上、ある意味仕方がないとも言えます。
同指数は財務健全性でスクリーニングをし、配当によるウェイト付けを行う事で、定期的(3月、6月、9月、12月)に構成銘柄の入替を行っています。
さて、HDVは今回、長期投資の王道銘柄であるジョンソン&ジョンソンと、このところの業績悪化により株価が下落傾向にあるゼネラルエレクトリックを構成から除外しました。
これにより、HDVのパフォーマンスがどう変化するのかを予測することは出来ません。しかし、無名な銘柄ならいざ知らず、ジョンソン&ジョンソン程の優良銘柄を手放してしまうのは、HDV保有者としては素直に喜ぶことが出来ないのが現実です。
ETFの銘柄入れ替えについて、その保有者はどのように考えれば良いのでしょうか。私なりの答えを述べてみたいと思います。
目次
HDV銘柄入替の詳細
2017年9月15日の銘柄入れ替えで、あらたにHDVに加わった銘柄数は全部で15です。
対して、除外された銘柄は全部で13です。
各詳細を確認してみます。
新たに追加された15銘柄
※追加の理由として、赤字の銘柄が財務健全性(健全性:良)の評価、その他の銘柄が配当利回り(高利回り)での評価となっています。
名称 | ティッカー | 割合 | 配当利回り |
ウェルズ・ファーゴ | WFC | 4.64% | 3.1% |
アッヴィ | ABBV | 2.72% | 3.4% |
シュルンベルジェ | SLB | 1.85% | 3.2% |
デューク・エナジー | DUK | 1.66% | 4.1% |
ライオンデルバセル・インダストリーズ | LYB | 0.78% | 4.0% |
BB&T | BBT | 0.71% | 2.9% |
ウィリアムズ・カンパニーズ | WMB | 0.66% | 4.0% |
オムニコムグループ | OMC | 0.34% | 3.0% |
インベスコ | IVZ | 0.31% | 3.5% |
ファスナル | FAST | 0.25% | 3.0% |
キャンベル・スープ | CPB | 0.18% | 3.0% |
ナショナル・フューエル・ガス | NFG | 0.09% | 2.9% |
レッグ・メイソン | LM | 0.06% | 2.9% |
プロビデント・ファイナンシャル | PFS | 0.03% | 3.2% |
除外された13銘柄
※除外の理由として、赤字の銘柄が財務健全性(デフォルト懸念)の評価、その他の銘柄が配当利回り(低利回り)での評価となっています。
名称 | ティッカー | 割合 | 配当利回り |
ジョンソン&ジョンソン | JNJ | 5.84% | 2.5% |
ゼネラルエレクトリック | GE | 4.72% | 3.9% |
ボーイング | BA | 2.59% | 2.4% |
マクドナルド | MCD | 2.05% | 2.4% |
ロッキード・マーティン | LMT | 1.27% | 2.4% |
テキサス・インスツルメンツ | TXN | 1.27% | 2.4% |
ワンオク | OKE | 0.37% | 5.5% |
インターパブリック・グループ・オブ・カンパニーズ | IPG | 0.15% | 3.6% |
シックス・フラッグス | SIX | 0.13% | 4.7% |
ベクトレン | VVC | 0.09% | 2.6% |
ウォツコ | WSO | 0.08% | 3.4% |
アイダコープ | IDA | 0.07% | 2.5% |
ノース ウェスタン | NWE | 0.06% | 3.5% |
除外された銘柄を見てみると、配当利回りが2.4%と2.5%の銘柄はこれを理由に売却されたことが分かります。その他は財務健全性に問題がありという事。いくら業績が悪化してきたとは言え、ゼネラルエレクトリック程の大企業がこれを理由に除外されるのはいまいち腑に落ちません。
実際、新たに追加された銘柄はどれも収益性の高い企業ばかりです。配当利回りも十分です。
モーニングスター配当フォーカス指数の特性上、財務健全性に問題のある企業はそもそもスクリーニングに引っ掛からないので、この辺りは安心と言えます。
つまり、ジョンソン&ジョンソンが除外されたことは、私個人の意見としては残念ですが、HDV全体のパフォーマンスにはそれほど影響がないでしょう。
しかも、配当利回りが2.4%近辺の銘柄が多く除外され、3%を超える銘柄が多く追加されたことで、HDV全体の利回り自体は上昇する可能性すらあります。
さらに、現時点でのジョンソン&ジョンソンはPERが22倍で配当利回りが2.5%です。一方、新たに追加されたヘルスケアセクターのアッヴィを見てみると、PER17倍に対して、配当利回りは3%を超えています。もちろん、他にもたくさんの銘柄が入れ替わっていますから一概には言えませんが、ジョンソン&ジョンソンの除外は、必ずしもデメリットではないはず…と思いたいです。
スマートベータ指数採用によるHDVの欠点
今後もHDVは高配当系ETFとしてパッシブ運用の投資家達から人気を誇る事でしょう。ジョンソン&ジョンソンという超優良銘柄が除外されてもなお、HDVは高い配当を我々に提供してくれるハズです。
しかし、理屈では分かっていても、なかなか納得出来ないのが投資家心理ではないでしょうか。
HDVは財務健全性と配当利回りを考慮した上で、最適なポートフォリオを組んでくれる。しかも銘柄の入替も全自動で行なってくれる。便利な反面、自らが好きだった銘柄の除外は正直言って悲しいです。銘柄に惚れてはいけない。キッチリとリターンをもたらしてくれる銘柄こそが正義だ。その意見ごっもともです。でもジョンソン&ジョンソンを除外するなら、他に除外すべき銘柄があるハズ。今の私には半ば感情論と言う、相場には不要な心理が働いてしまっているのです。
HDVは今後もそれなりのリターンをもたらしてくれる優良ETFであると言えます。
しかし、今回のような入れ替えがある限り、自らのお気に入り銘柄が除外されるというリスクは常に存在します。今後もHDVを保有していくはこのリスクを許容できるかによるでしょう。
繰り返しになりますが、ジョンソン&ジョンソンが除外されはしましたが、その影響はHDV全体で見れば微々たるものです。むしろ、利回りの低下していたジョンソン&ジョンソンが除外されたことにより、HDV全体の利回りが上昇するかもしれません。
銘柄入替が頻繁=コスト増?の問題
以前に、当ブログの読者の方から、HDVの売買回転率の高さ=コスト増に繋がるのですか?という質問を受けた事があります。詳細は過去記事に記載してありますので、こちらでは割愛させていただきますが、私はこの件に関しては何ら心配する必要が無いと考えております。
ETFは投資信託と違い、指定参加者が構成銘柄を直接的に売買しているとの理由もありますが、そもそも見えないコストが掛かるETFは指数とのトラッキングエラー(乖離)が進むという現象が起きます。
という事で、HDVのトラッキングエラーを見てみると
1年 | 3年 | 5年 | 設定来 | |
基準価格 | 4.66% | 7.04% | 10.73% | 12.01% |
市場価格 | 4.67% | 7.05% | 10.72% | 12.01% |
ベンチマーク | 4.73% | 7.15% | 10.97% | 12.32% |
基準価格と市場価格とのかい離が発生しないのは、指定参加者による裁定取引のお陰です。ベンチマークをほんのわずかに下回っていますが、これは信託報酬の分だけ乖離してしまうのは当然の事。この程度の乖離は許容範囲で優秀な運用がなされているという事になります。
試しに、IVV(S&P500)のトラッキングエラーも確認してみると
1年 | 3年 | 5年 | 10年 | 設定来 | |
基準価格 | 17.85% | 9.56% | 14.57% | 7.13% | 5.00% |
市場価格 | 17.83% | 9.57% | 14.56% | 7.13 | 12.01% |
ベンチマーク | 17.90% | 9.61% | 14.63% | 7.18% | 12.32% |
トラッキングエラーに関しては、IVVと同水準。ベンチマークの指数にきっちりと連動しているという事を考慮すれば、見えないコストの心配もする必要が無いという事です。
HDVに対する私の戦略【バイ&ホールドは継続】
個別銘柄を保有していると、心の底ではそれが優良銘柄と分かっていながら売りたくなる時が訪れるかと思います。
そのきっかけは人それぞれですが、一時的な悪決算や悪材料、有名投資家による売却(バフェット氏によるGEとIBMの売却等)などが理由として挙げられるかと思います。
しかし、この悩みがETFにおいても現実のものとなってしまいました。
それでも私が、優良銘柄を除外するHDVを見放すことはありません。一時の感情や思考に左右されて売却したりはしません。
ここで、HDVを手放してしまう人は、個別銘柄であってもそれらしい理由を付けて手放してしまう。その選択が正しい正しくないは別として。結局、個人投資家は情報に流され、感情に流され、その場の雰囲気で取引をしてしまう。
優良企業の株式をずっと持ち続ける。これって簡単なようで実はもの凄く難しいと事だと思いますよ。売る理由なんていくらでも出て来てしまいますからね。だからこそ、個人投資家は素直に根気よくETFを保有し続けるのがベターな選択ではないでしょうか。
現在、シーゲル流をここまで再現できるETFはHDV以外に存在しません。仮に私が個別銘柄でシーゲル流を実行したとしても、HDVのパフォーマンスに勝てる気がしないのです。
だからこそ、これからもHDVをバイ&ホールドし続けます。
おまけ【HDVの追加候補銘柄リスト】
HDVは完全法により運用されているわけではありません。
※完全法と言うのは、ベンチマークとなる指数と、全く同じ比率で銘柄の組み入れを行う事。トラッキングエラーは少ないがコストと手間がかかる。
故に、モーニングスター配当フォーカス指数とHDVの組入れ銘柄が完全に一致するとは限りません。しかし、モーニングスターのホームページにて同指数の追加候補リストが記載されているので、紹介したいと思います。
ここに記載されている銘柄は、今後HDV組み込みの可能性があるという事です。
- べミス
- ファースト・アメリカン・ ファイナンシャル
- エア・プロダクツ・アンド・ケミカルズ
- CHロビンソン・ワールドワイド
- ドクターペッパー・スナップル・グループ
- ハンチントン・バンクシェアーズ
- ジョンソン&ジョンソン
- ジョンソンコントロールズ
- ケーエルエー・テンコール
- シスコ
- ダンキン・ブランド・グループ
- ザ・ハーシー・カンパニー
- コアラボ
- ギリアド・サイエンシズ
- ハッベル
- キャピトル・フェデラル・フィナンシャル
- IDA
- アクア・アメリカ
- CNAファイナンシャル
- クロロックス
- テキサス・インスツルメンツ
- プラクスエア
- ロッキード・マーティン
- トラベラーズ
- ザ・ホーム・デポ
既にジョンソン&ジョンソンが候補銘柄に含まれていますね(笑)今後、配当利回りの変化次第では再び追加される日も近いかもしれません。