空売り専門の機関投資家「グラウカス」の標的にされた伊藤忠商事のその後を検証する

昨年の7月に空売り専門の機関投資家「グラウカス」が日本に上陸し、初のターゲットを伊藤忠商事に定めました。本記事ではグラウカスの基礎知識と、発表からこれまでの伊藤忠の株価について考察していきたいと思います。

グラウカスとは?

グラウカスとはアメリカのカリフォルニア州で設立された投資ファンドで、空売りを主な戦略としています。グラウカスは粗の見つかりそうな企業をターゲットに絞り、その企業を徹底的に調べつくします。そして、不当な会計処理などの株価下落要因はグラウカス独自のレポートにまとめられます。この段階でグラウカスは対象企業の株を大量に空売りします。その後「強い売り推奨」として、企業の不正をまとめたレポートを世に公表します。

もちろん、市場の反応を正確に予測することは出来ませんが、突発的な悪材料で企業の不正に関する事ならば、株価は大抵下がります。レポート発表後に暴落した株を買い戻して利益確定、これがグラウカスの戦略です。

ちなみにグラウカスという名前は海洋生物であるグラウカス・アトランティカス(アオミノウミウシ)が由来となっており、自身より大きな獲物をも捕食してしまうという力強さの持ち主です。

グラウカスレポートによる伊藤忠の3つの不正

  1. 伊藤忠が出資していたコロンビア鉱山の水増し会計(不適切な手段で減損を隠蔽した)
  2. 伊藤忠が6020億円出資している中国の企業「CITIC」、同企業における持分利益を自社利益として計上するのは不適切
  3. 中国の食品流通企業大手「頂新」の特別利益にも不正の痕跡がある

グラウカスによるレポートは40ページを超える内容。詳細は割愛させていただきますが、伊藤忠はこれに対してすぐさま反論しています。

レポートにまとめられた内容が事実に反しているとは言えないものの、物の見方の問題や偏ってるようにも見える内容のため、市場関係者からは「不正と呼べるかまでは疑問」との声も上がっていました。

レポート発表時の株価の動向

レポートを発表したのが2016年7月27日の取引開始前、グラウカスの定めた目標株価は1,262円。その後の株価は年初来の前日比で10%を超える下落を見せる場面も見せましたが、その後も継続的に株価が下がるという訳ではなく、早い段階で上昇へと切り返しているのが分かります。

伊藤忠商事日足チャート

発表当日は寄付きから窓を開けての大幅な下落をしました。一時的に1135円を記録しましたが、その後は大きく買い戻され、その後も持ち合いつつ下がってはいきましたが、割と早い段階で切り返し、上昇トレンドへと移行していきました。

27日当時の値動を見ても安値から大分切り返されているところを見ると、市場の反応は限定的だったようです。グラウカスが予め空売りを行っていたことを考えると、それなりに利益が出ていることが予想されますが、発表を受けてから売りポジションを持った投資家達は、思うように下がらずに歯がゆい思いをしたのではないでしょうか。

シトロン・リサーチによるCYBERDYNEの極端に低い目標株価の設定

グラウカス以外の空売りファンドの実例もあるので一緒にご紹介いたします。

グラウカスと同じアメリカ設立の投資ファンドであるシトロン・リサーチは、8月16日に東証マザーズの精密機器メーカーCYBERDYNE(7779)に対して、極端に低い目標株価を設定し、同時にレポートの発表を行いました。8月15日の終値が2,077円であるのに対し、目標株価を300円に設定するという事は、事実上の「強い売り推奨」ということです。

CYBERDYNEが伊藤忠と異なるのは、発表後も2カ月近くに渡り株価を下げている点です。そして、発表直後の下がり方も伊藤忠より勢いが強いことが見て取れます。

シトロン・リサーチもグラウカスと同じく空売り戦略を用いてることからも、今回の下落でかなりの利益を取れたことが予想されます。市場の反応は良くも悪くもシトロン・リサーチの思惑通りに動いたようです。

要点整理

  1. グラウカスはターゲットを徹底的に調べ上げ、不正を世に公表する。これによる空売りで利益を上げる事を戦略とする投資ファンド
  2. 日本初のターゲットは伊藤忠、40ページに及ぶレポートの発表も、市場の反応は限定的
  3. 伊藤忠の株価は比較的短い期間で上昇トレンドへと移行
  4. シトロン・サーチによるCYBERDYNEのレポート発表は伊藤忠よりも投資家心理に強い影響を与えた
  5. CYBERDYNE発表後の急落、その後の下落は伊藤忠以上であった

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