アメリカ個別銘柄に詳しくなると、ETFへの投資に疑問を持つようになる。

必要以上のリスクにさらされる心配もなく、市場平均のパフォーマンスを確実に享受することが出来る。組み入れ銘柄のうち、例え1社が危機に瀕したとしても、そのマイナスは他の企業によってカバーされ、全体で見ればその損失は微々たるもの。

ETFの魅力は、投資のしやすさ、商品としての安定性、リスクの低さにあります。市場全体が低迷期ならば仕方ありませんが、それを考慮したとしても、ETFに投資することのメリットは計り知れません。

しかし、ETF詳しくなり、個別銘柄の知識もそれなりについてくると、ETFに対してある種の疑問が湧いてくるようになります。

ETFのメリットは分散にあることは事実。でも分散されすぎなのでは?

だったら個別銘柄で自らポートフォリオを組んだ方がより高いパフォーマンスを期待できるのでは?

今回はこれらについて検証していきます。

ETFのメリット・デメリット

まずは改めて、ETFのメリット・デメリットを考えてみます。

ETFのメリット

1.市場の平均を買う事が出来る

市場の平均と言っても、アメリカの主要3指数は、今のところ右肩上がりの素晴らしいパフォーマンスを記録しています。知識の不足している投資初心者が、下手に個別銘柄に手を出すよりかは高いパフォーマンスを上げる事が出来ます。

2.構成銘柄を定期的に入れ替えてくれる

例えば、S&P500などでは、時代や経済情勢に応じて定期的な銘柄の入れ替えが行われています。それに伴い、S&P500に連動するETFの銘柄も見直される事になります。つまり、ETFと言えど、業績の悪い企業は構成から外され、新たに基準を満たした銘柄が組入れられるため、ETFの構成自体にも一定の流動性が生じるわけです。これを自分でやるのは、コスト面(ポートフォリオ入れ替えに伴う手数料)も掛かりますし、また手間も掛かります。それを勝手にやってくれるETFの仕組みはまさに個人投資家向きです。

3.少数企業の悪影響を受けにくい

個別銘柄での集中投資では、その企業が危機的状況に置かれた場合、投資家はその影響をもろに受けてしまいます。その危機が一時的なものなのか、企業の存続自体を脅かすものなのか、のどちらかで投資判断は大きく違ってきますが、後者だった場合、その経済的・精神的ダメージは計り知れません。アメリカを代表する企業=世界を代表する企業に投資をすれば、そのような状況に陥る事は、稀であるとも言えますが、リスクが0という訳にはいきません。しかし、ETFならば、このリスクについてはほとんど無視ししても良いレベルです。指数構成銘柄に相応しくないと判断されれば、指数自体から除外されるだけなのですから。

4.暴落時の買い増しが実行し易い

指数自体が0になる事は99.9%ありません。リーマンショック級の暴落がくれば、資産が半分若しくはそれ以上目減りしてしまう可能性すらあります。しかし、そんな状況からも、アメリカ市場は華麗な復活を遂げ、日々高値を更新し続けています。歴史が再び繰り返されるかは、実際のところ解りませんが、過去の事実があるから暴落局面でも安心してETFを買い増しすることが出来るのです。もちろん、これは超長期保有若しくは、インカムを目的とした投資全体の話ではありますが。

ETFのデメリット

1.市場の平均と言う特性上、それ以上は狙えない

バフェット率いるバークシャー・ハサウェイ、アップル、アマゾン等々…これらはS&P500のパフォーマンスを大きく上回ってきました。確かにこれは結果論でもあり、FANG(Facebook、Amazon、ネットフリックス、Google)を始めとする、ハイテク株は、割高であると同時に、急落する可能性と言うものが常に存在します。これを言ってはキリがありませんが、資金量に乏しい個人投資家が、キャピタルゲインを狙っていくには、ハイテク株への投資自体が魅力的に映る事はごく自然な事でしょう。

2.繰上償還、上場廃止の可能性

ある程度メジャーなETFを売買している限り、これについて心配する必要はありません。あくまで、流動性が極端に少ないETFに投資をする際にだけ、考えられるリスクです。

3.指数を買うという特性上、本来ならば投資をしたくない銘柄も買う事になる

ETFの最大のメリットは分散効果です。一方で、分散が効きすぎる=自ら投資をしたくない銘柄も購入することになる、というデメリットも存在します。自分お気に入りのETFを見つけても、その銘柄いらないよ、というのが組み込まれていたら…。ならば、自分で個別銘柄を買い集めた方が、理想的なポートフォリオが出来るのに。ETFに疑問を持ち始めるのは、こういった考えからなのではないでしょうか?

高配当系株式VS高配当ETF

アメリカ市場への投資を実践する人、ジェレミー・シーゲル氏の著書「株式投資の未来」に魅せられた人。このような人たちのうちの何人かはETFによる高配当戦略へとたどり着きます。S&P500に連動するETF自体も、分配金自体を出してはいますが、その利回りは低く、配当再投資戦略には不向きです。

バンガード、ブラックロック、ステートストリートの運用会社3強からは、素晴らしい高配当ETFが出ています。

VYM(バンガード)、HDV(ブラックロック)、SDY(ステートストリート)これらETFは分配金だけでなく、売却益も狙えるETFです。長期で持てばそれなりのリターンを投資家にもたらす可能性の高いETFであるでしょう。

これらのETFに投資すること自体は大いに結構。下手な日本株を買うよりかは、ずっと期待を込められます。

やがて投資についても詳しくなると、今度はETFにどんな銘柄が組み込まれているのかが、気になるようになってきます。

これ自体は素晴らしい事。自らが保有する商品の中身を詳しく知るのは必要な事です。当初はどれもこれも素晴らしい銘柄とだけ考えていても、それなりに知識が付いてくると見方は変わります。

この銘柄の比率はもっと高い方が良いのでは?

なぜこの銘柄を構成から外すのか?

先ほど上げた3つの高配当ETFに組み込まれている銘柄はどれも優良企業であり、それをまとめて購入できるのは個人投資家にとってはとてもありがたい事です。

しかし、人によってはそれだけでは飽き足らず、言ってみればインデックス投資は退屈なのです。ETF自体のポートフォリオは運用会社で勝手に行ってくれますから、我々個人投資家はバイ&ホールドを続けるだけです。

やがて投資家は気付き始めます。

高配当系ETFをただ買うのではなく、高配当の個別銘柄でポートフォリオを組んだ方がトータルのパフォーマンスで上回る事が出来るのでは?

これが脱ETF投資の第一歩となります。

例えば、シーゲル流投資を実践する投資家に人気の高い「HDV」

このETFの2017年7月25日時点の分配利回りは3.33%です。

HDVの組入れ銘柄の上位5を見てみると

  1. エクソンモービル:3.84%
  2. AT&T:5.3%
  3. ジョンソン & ジョンソン:2.48%
  4. ベライゾン コミュニケーションズ:5.22%
  5. シェブロン:4.18%

これら5銘柄の平均利回りは4.2%。比較的利回りの低いジョンソン&ジョンソンを除外すれば、4.6%。

これだけでもHDVを1%近く上回るポートフォリオを組むことが可能となります。また、これら5社は企業自体が解散する可能性も現時点では極めて低く、投資対象としては十分魅力的です。シェブロンやエクソンモービル等の石油メジャーは原油価格の下落により、安値で仕込めるという事を考えれば、投資妙味があるとも言えます。

高配当系ETFと高配当銘柄の使い分けは?

ETFに比べると、個別銘柄はどうしてもある程度のリスクを負う事になります。どんな優良企業であれ、絶対に解散する可能性が無いとも言い切れません。実際は、アメリカを代表する世界的な企業ならば、その可能性は限りなく低いと言えますが、そのリスクが0になる事はありません。

対してETFならば、個々企業の悪影響はある程度限定されます。HDVなどは財務健全性や配当の観点から、一定の期間での銘柄入れ替えを行っており、存続に疑義のある企業の株は自ずと、ETFから外されるからです。

あとは、ETFの特有の繰上償還と上場廃止になりますが、これに関しては先ほども言った通り、VYM・HDV・SDYなどのETFにおいては心配する必要はありません。

時たま、資本主義経済が崩壊したらとか言う人もいますが、こうなればそもそもの「お金」の価値が今とは全く違ったものになってしまうので、考えるだけ無駄です。

話を戻しますが、個別銘柄による高配当戦略か、ETFによる高配当戦略かは、結局はその人の考え方によるとしか言えません。

いくつか具体例を挙げるとするならば…

ETFオンリーの投資に向いている人

  1. 個別銘柄に対して興味が無い人
  2. 個別銘柄を分析するスキル、時間が無い人
  3. 投資に余計な労力を使いたくない人
  4. 安全・安定・確実な資産運用がしたい人

個別銘柄を取り入れるべき人

  1. 市場平均を上回るリターンを追求したい人
  2. 多少のリスクは許容できる人
  3. 銘柄分析が苦でない人
  4. 個別銘柄に分散できるだけの十分な資金力ある人

とりあえず、初心者ならばETFオンリーから始めるのか良いでしょう。その上で個別銘柄に興味が出て来たら、とりあえずしっかりと分析をすることから始めていけば良いだけです。焦る必要はありません。

では個別銘柄に投資をする場合は、どのような選定基準で絞り込みを行えば良いかという事ですが、それについては後程解説いたします。

無駄にポートフォリオをいじくり回すな

これまでETFのみに投資をしていたけども、最近個別銘柄に興味が出て来たからETFを全部売って個別銘柄を買おう。

今まではディフェンシブセクター中心で来たけど、相場が強気に傾いてきたから、ハイテク銘柄の割合を増やそう。

このところの上昇で一部のセクターの割合が増えて来たから、売却することでポートフォリオ全体をリバランスしよう。

程度にもよりますが、資金量に乏しい我々個人投資家がむやみやたらに売買を繰り返し、ポートフォリオをいじくり回すのは、賢明な判断であるとは言えません。

例えば、今まではVYMやHDVに投資をしてきたけど、個別銘柄の方がよりリターンを狙えることが分かったから、これらを売って個別銘柄を購入するという選択は果たしてどうなのでしょうか?

ETFを仕込んでいた価格にもよりますが、自らの満足のいくポートフォリオ作成のために優良なETFを手放してしまう事は正しい選択なのでしょうか?

長期投資前提で仕込んだ銘柄に、重大な危機が生じた場合は当然切り捨てる必要がありますが、そうでないなら無理に売却せず、その上で新たに銘柄を買い増ししていけば良いのではないでしょうか?

明らかに自らの戦略と食い違う場合は、仕方ありません。しかし、綺麗なポートフォリオだけにこだわる事はただの自己満足でしかありません。

個別銘柄における高配当戦略

では、個別銘柄による高配当戦略にはどのような方法があるのか?

実はこれに関しても王道的な手法は存在しているので、今回はそちらを簡単にですがご紹介します。

ダウの犬戦略

ダウの犬とは、ニューヨークダウ構成銘柄の内、配当利回り上位10銘柄を選び、同金額の投資をするという方法です。1年後に再度、銘柄の見直しを行い、新たに利回り上位10位以内に加わった銘柄があれば、それを購入し、外れた銘柄は売却するという戦略をとります。

過去に行われた検証では、ダウの犬戦略はNYダウ平均のパフォーマンスを上回る結果を残したそうです。もちろん、毎回毎回ダウの犬戦略がNYダウ平均を上回ったという事ではなく、あくまで勝率に限った話です。

ダウ・コア10種

これは過去15年間に渡り、一度も配当金を減らしたことのない銘柄から、配当利回りが特に高い10銘柄を抽出し、投資をするという方法です。

S&P10種

S&P版ダウの犬です。S&P500の内、配当利回り上位10銘柄に投資をする方法です。

S&P・コア10種

過去15年間一度も配当金を減らしたことのない銘柄から、配当利回りが特に高い10銘柄を抽出し、投資をするという方法です。ダウ・コア10種のS&P版です。

これらの戦略を取るならば、年に1回と言えど、ポートフォリオを入れ替える必要が出てきます。それが楽しいと感じるか、手間と感じるかは人それぞれですが、後者ならば最初から個別銘柄による運用は考えず、ETFのみの投資が適していると言えそうです。

まとめ

ETFも個別銘柄もそれぞれに魅力があり、絶対的な優劣は付けられません。

自らの投資戦略と相談し、じっくり悩んで決めてください。大切なのは自身のスタイルをコロコロ変えない事です。あっちこっちに浮気するのではなく、歴史的にもそれなりのリターンを期待できると実証できる方法ならば、とりあえずは忍耐強く続ける事です。

肝心の戦略自体がどうしようもないポンコツであっては仕方ありませんが、アメリカ市場に投資をすると決めた賢明な投資家ならば、ある程度の下調べはついているハズ。

長期投資は忍耐です。勝者を名乗れるのは1年後ではありません。10年後、若しくはもっと先なのです。

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