株式保有率による権利と買収防衛策について【M&A・TOBの基礎知識】

企業の株を買うということは、その企業の経営に参加するということです。当然ながら行使できる権利は持ち株数に応じて大きくなります。

また、保有率による権利を学ぶ事は、M&A(買収・合併)やTOB(公開買い付け)などの知識を学ぶ事にも繋がります。

普段は売却益重視でこの辺りを全く意識していない投資家も、知識の1つとして覚えておいても損はないでしょう。

株式保有率による権利

株主は持っている株の数に応じて様々な権利を持つことが出来ます。当然ながらたくさん保有していればいる程、その権利は大きくなります。

株式保有率による権利一覧

1%以上:株式総会で議案を提案することが出来る

3%以上:企業の会社の帳簿を閲覧。謄写することが出来る

3%以上を6ヶ月以上保有:株主総会を招集し、取締役の解任を請求することが出来る

34%以上:株主総会で提出される提案に対して拒否権を持つことが出来る

51%以上:取締役を選任、決算を承認等の「経営権」を持つことが出来る

67%以上:新株の発行、定款の変更等により、企業の経営をコントロール出来るようになる。また、67%を保有した時点で残りの株式総数は33%、拒否権を有するのが34%以上であるから、自分以外の株主は拒否権を持てない事になる

買収に必要な保有率

買収には段階があり、まずは株主総会で拒否権を発動できる34%(3分の一)を目指します。次は経営権を行使するために必要な51%(2分の1)。さらに、企業の経営をコントロールすることを考え67%(三分の二)の株式取得を目指します。

TOB【公開買い付け】について

実際にある企業の株式を51%以上取得しようと思ったら、多くの株主との取引交渉をしなければなりません。当然ながら一部の株主だけに市場よりも高値で取引交渉をするなどの行為は不公平となります。

この不公平を解消するために、企業の経営権取得を目的として大量の株式を購入しようとする者は、不特定多数の株主に対し、期間・数量・価格を公示し、公平な場を設けて取引をするよう証券取引法で定められています。これをTOBと言います。

TOBのルール

  1. TOBを行う際は、期間・数量・価格を公示する必要がある
  2. TOBを行う者は一度買付を発表すれば、証券取引所を介さずに、株主から直接株を買う事が出来る
  3. TOBを行う際は、より多くの株主が買い付けに応じてくれるように、その時の株価よりも2~3割程度高く価格を設定する
  4. 上記の理由によりTOBの発表された株価は、TOB価格に合わせて急上昇する
  5. TOBは株価形成に大きな影響力を持つので、一度TOBを発表したら、原則として中止をすることは出来ない。
  6. TOB価格は途中で引き上げる事は出来ても、引き下げる事は出来ない
  7. TOBでは最低数と上限数を設定することが出来る。最低数を応募が下回った場合はTOB不成立となり、応募された株式を購入せずに返却して良い事となっている

敵対的買収に伴う買収防衛策について

TOBは会社経営陣への相談なしに株式を取得することが出来ます。これにより経営陣の意向に反して買収を行う事も可能となり、このような場合を敵対的買収と呼びます。一方で、買収対象の企業の経営陣との合意に基づいて行われる買収を友好的買収と呼びます。

敵対的買収には様々な防衛策があります。その防衛策のネーミングがなかなかユニークで面白く、命名した人のセンスには脱帽します(笑)

1.ゴールデンパラシュート

敵対的買収を行うのは、経営陣との合意が得られそうにないからです。経営陣との折り合いが付かない=買収後に現在の経営陣は解任される可能性が高い。これを利用し、あらかじめ経営陣の退職金を高額に設定し、買収を思い留めさせるという作戦をゴールデンパラシュートと呼びます。

2.ポイズンピル

ある条件が満たされたら安い価格で新株が買える新株予約権をあらかじめ大量に発行しておき、買収をしようとする者が現れたら株式の総量を増やす。これにより買収企業の株式保有率を下げ、買収を防ぐ作戦をポイズンピルと呼びます。

新株予約権:簡単に言うと、前もって決められた価格で株式を購入することの出来る権利のこと

3.焦土作戦

買収企業の持っている資産価値の高いものを売却することで、買収そのもののメリットを無くそうとする作戦を焦土作戦(別名:クラウンジュエル)と呼びます。実際には、資産価値の高いものを手放す=企業の価値も低下、という事になり兼ねないため、実行する側にも細心の注意を払う事が要求されます。

かつて、ライブドアがニッポン放送を買収しようとした際には、ニッポン放送はポニー・キャニオンやフジテレビの株式を売却することを示唆しました。ライブドアによるニッポン放送買収の目的はこの2社を間接的に支配する事でした。実際に売却することはありませんでしたが、焦土作戦の1例であると言えます。

4.パックマン・ディフェンス

買収を仕掛けれらた企業が、逆に買収を仕掛けてきた企業を買収することを言います。現実問題として、買収を仕掛けてきた企業が時価総額の大きな企業だった場合は、この作戦の実施自体が困難であり、資金力も必要であることから、両企業ともにリスクの伴う作戦であると言えます。

5.白馬の騎士【ホワイトナイト】

買収しようとする企業が現れた際に、より有利な条件で友好的な買収を行ってくれる企業に働きかけ、買収者になってもらう事を白馬の騎士と呼びます。

買収には多額の資金が必要となりますから、白馬の騎士となってくれる企業もそれなりの好条件がなければ買収に応じてはくれません。助けを求めた際に、そもそも買収に応じてくれる企業が見つかるか分からないというデメリットもあります。

敵対的買収:グリーンメーラーとは?

初めから買収対象の企業を経営する意思がないにも関わらず、転売目的で企業の株式の買付を行う「会社の仲介人」の事をグリーンメーラーと呼びます。買収価格よりも高値で売る事により利益を上げるという構図は、まさに「せどり」と同じです。

グリーンメラーの転売先は基本的に3つあります。

1.同業他社

ライバル会社を買収することにより、生産ラインを効率化、お互いの企業の不得意な分野を補完し合う事が出来ます。売り先としては最も有力となります。

2006年の11月にスティール・パートナーズがカップ麺大手の明星食品を買収し、同業他社の日清食品に転売したのが代表的な例です。

2.他業種

自社の分野とは異なるが、新たなサービスや商品を売り出した時などに行ったりします。

3.正体不明の会社に売り飛ばすと脅す

どこか怪しげな企業に売り飛ばすぞと脅し、自身に再び買い取らせるよう仕向けます。

企業買収の動きを探るには?

企業買収の動向を探る手段の一つとして、証券取引法の5%ルールを活用すると言った方法があります。証券取引法では、ある企業の株式を5%以上保有した場合は国に報告しなければならないと定めています。

この情報は財務省、財務局が運営するウェブサイト「EDINET」で確認することが出来ます。

要点整理

  1. 株主は、その保有率に応じた権利が与えられる
  2. 買収に伴い、経営権を行使するために必要な持ち株比率は51%
  3. 企業の経営権を目的として大量の株式を購入する際はTOBにより買い集めなければならない
  4. TOBは株価形成に大きな影響を及ぼす事から、様々なルールが定められている
  5. 敵対的買収には様々な買収防衛策がある

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